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アクリフーズの事件で、消費者は怒るべきだという記事があったので思うところを書いてみます。
第一報が入ったあたりの私の反応はTogetterに一部まとめられてるのでどうぞ。
Twilogの12月29日~31日にもそれ関連の呟きは多いので暇ならどうぞ。
さて、「子供(体重20キロ)が1度に60個のコロッケを食べないと毒性が発症しないレベル」という説明したアクリフーズにこの説明を行ったことに関しては一切弁解の余地はないですが、厚労省が素早く訂正を促し、深夜1時半に会見を開いて謝罪して訂正を行ったことで「この件はもういいかな」と思っちゃったんですよね個人的には。「済」の箱にしまわれたというか。
ただそれは私の感覚なので他人もこう思わなければおかしいというつもりは毛頭ありません。
しかしLD50(半数致死量)を提示されたのになんでわりと落ち着いていたんだろうなと思ったのですが、まあ普通に考えて、
一度にコロッケを60個食べる子供(体重20kg)はまずいない
と思ったからだろうなと。
マラチオンのARfD(急性参照用量)は2mg/kg 体重で、NOAEL(無毒性量)は15mg/kg 体重(ヒトでの値)。
15000ppm(≒15000mg/kg)のコロッケを一個(22g)食べたときのマラチオンの摂取量が330mg。
体重20kgの子供のNOAELが300mg。
誤って一個食べたとしてもNOAELを少し越す程度なので嘔吐や下痢なんかよりもやはり臭いによる気持ち悪さの方が先に立つんじゃないかなと思いました。
半数致死量を食べるためには該当商品を7袋半食べる必要があります。まずこんなに買いません。
成人の場合は体重60kgで換算するのでこの3倍量ですよね。180個。まあ普通はいっぺんに食えません。一袋(8個)をいっぺんに食べて嘔吐した事例がありましたが、最大でその程度だろうと。
子供が8個ぐらい食べたら中毒症状が出ると思いましたが「半分殺す気か」とは思いませんでした。
ARfDで判断すべき事例をなぜNOAELで評価してるのかについては、ARfDは商品回収の目安で、NOAELは実際に口にしてしまったときの危険性の目安で、私の中では双方別々の評価基準なのです。
もちろん、安全性を考慮して一般的にはARfDで評価するのが正しいです。
ただ、私のリスク感覚はそういうものだったので、、
説明の誤り、など生ぬるい表現だ。半数致死量を基に説明したのだから、「日本人の半数を殺す気か」くらいの勢いで怒っていいくらいのミス。
とは思わないんですよね。
というか「日本人の半数を殺す気か」という表現は実際のリスクの大きさから考えるとオーバーな気がします。
私は該当食品を食べたことがないし、180個も食べる気はありません。
「コロッケを60個食べた子供(20kg)や180個食べた大人(60kg)の半数を殺す気か」という表現はできるかなと思いますが。
それよりも私はむしろマスメディアに怒ってました。
アクリフーズの説明は本当にあってはいけないし、LD50で計算してしまうとはお粗末すぎます。ARfDは日本ではあまり馴染みのない基準値なので知らなかったとしても「ありえないでしょ」とは言えないなあと思っているのですが、そうであってもNOAELやADIで計算すべきでした。そうすればとんでもない量が混入されていたと正しく認識できたでしょうし、「60個食べないと~」という表現は出てこなかったでしょう。
ただ、会見の場に居合わせた記者は誰一人としてこの計算をおかしいと思わなかったのでしょうか。
記事にして公開する前に編集部の誰もおかしいと思わなかったのでしょうか。
毒性評価が正しく行われているかを確認するというのは、初歩的な事実確認の範疇だと思うのです。
報道では会見内容を忠実に伝えることも大事だと思うのですが、会見内容が事実であるか確認する責任も報道にはあるのではないかと思うのです。
もちろん、その場で「この計算はLD50を基に行われている…!」と気付けと言ってるわけじゃないですよ。私だってマラチオンのLD50はおろかADIもARfDも知りませんでした。
しかし、2200ppmとか15000ppmという数値を見て「そんなに余裕があるだろうか?」と思わなかったんだろうか、と疑問に思うのです。
もしかして、会見の場では記者は質問をできなかったのでしょうか。
アクリフーズに対して「日本人の半数を殺す気か」くらいの勢いで怒っていいのならば、マスメディアに対しては「日本人の半数を殺す片棒を担いだ共犯者」と怒っていいと思うのですよ。
だって無批判に右から左に流してただけですからね。報道ってそういうものなんですね。
その後もさらりと訂正会見があったことを報道してますけど、そもそもマスメディアがアクリフーズの説明を批判的に検証していればこんな恐ろしい情報が流れずに済んだと思いませんか。
この計算をやっちゃったアクリフーズの人が会見前に厚労省やマルハニチロに相談しなかったのは馬鹿だなあと思いますし、マニュアル外のことが起こったら素直に外に助けを求めなさいよと思いますけど、一番信用できないのはマスメディアだなあと思っちゃいましたよ。
これ、担当した人は食品報道したことがない人なんでしょうか。各社それぞれ。
農薬の基準値超過の場合、とりあえず計算してみようってならないんでしょうか。不思議。そういう習慣付けさせた方がいいですよ。そうしたら読者にどんな情報が必要かわかるでしょうから。
以上、私の怒りポイントでした。
長いことお疲れ様でした。
以下に「こうすればよかったんじゃないだろうか」ということを箇条書きにしていきます。
■アクリフーズやマルハニチロ、企業側に対して
・第一報の時点で警察に相談したいたことから、混入の可能性も視野に入れていたことがわかる。ならば「一度に○○個食べない限り」という表現は使ってはいけない。
・ARfDは日本では一般的な概念じゃないので知らないのは仕方ない。けれどLD50はない。ありえない。「一度に○○個~」という表現を使いたければADIで計算しよう。
■マスメディアに対して
・150万倍とか農薬の残留基準とか実際の数値がわからないような報道はやめて。
・15000ppm、残留基準値(0.01ppm)など書いてくれれば読者も理解できる。
・というか、事実確認する気がないのなら読者が事実確認できるように数値を載せて下さいマジで。
・食品関連の報道する記者の方は、こういう報道を見たら計算するクセをつけた方がいいんじゃないだろうか。自分の担当でなくても。
・こういうのは慣れなので。
■厚労省に対して
・GJでした。
・いつもADIで規制するのにARfDが出てくると思ってなくてすごくびっくりしてドキドキした。
・なんだか私の知ってる厚労省と違う。
・ポジティブリスト制度の一律基準値違反についてはARfDで評価しましょうよそうしましょう。
最後に。
今回の事件は、最初にまず「混入か」と思って「あ、まだ残留農薬の可能性があるのか」と思った後に実際の数値を見て「混入ですね」と思いました。現時点(1月21日)では残留農薬の可能性はほぼゼロと考えていいでしょう。
その理由は主に二つ。
原材料が汚染されていたのならば同一ラインが汚染されていたということなので、
・マラチオンが検出された製品がもっと見つかっていい
・検出された製品間での数値の差が100倍以上開くことは考えにくい
ということ。
すごく久しぶりにブログというものを書いたのでなんかまとまらない記事になっちゃいましたね。
めんどくさいなーと思ったのでまたブログから遠ざかりそうとかなんとか。
■以下、本文になくてもいいけど知ってると得する?予備知識
「残留農薬の基準の○○倍」という表現がなぜ役に立たないかというと、実は農薬の残留基準値は作物によってバラバラなのです。
たとえばマラチオンだとこんな感じ→マラチオンの基準値
作物によっては最大で8ppmまで残留しても違反ではないんですね。
報道で用いられる「残留農薬の基準値」という表現の9割(体感)がポジティブリスト制度による一律基準値のことを指しています。つまり0.01ppmです。(検出限界の関係でそれより大きいものもあります)
マラチオンの場合、同じ「残留農薬の基準値」でも最大値と最小値で800倍の差があります。
・0.01ppmの150万倍なら15000ppm
・8ppmの150万倍なら12000000ppm
その間に基準値はいくつもあります。
これでは値が一つに決まりませんね。
だからこういう表現の仕方はよくありません。インパクト重視なだけで情報すっかすか。
ではこうしたらどうでしょうか。
「残留農薬の基準値(0.01ppm)の150万倍が検出された」
冷凍食品には残留農薬の基準値なんてないのでもっとストレートに
「最大で15000ppmのマラチオンが検出された」
これならわかるよね?
第一報が入ったあたりの私の反応はTogetterに一部まとめられてるのでどうぞ。
Twilogの12月29日~31日にもそれ関連の呟きは多いので暇ならどうぞ。
さて、「子供(体重20キロ)が1度に60個のコロッケを食べないと毒性が発症しないレベル」という説明したアクリフーズにこの説明を行ったことに関しては一切弁解の余地はないですが、厚労省が素早く訂正を促し、深夜1時半に会見を開いて謝罪して訂正を行ったことで「この件はもういいかな」と思っちゃったんですよね個人的には。「済」の箱にしまわれたというか。
ただそれは私の感覚なので他人もこう思わなければおかしいというつもりは毛頭ありません。
しかしLD50(半数致死量)を提示されたのになんでわりと落ち着いていたんだろうなと思ったのですが、まあ普通に考えて、
一度にコロッケを60個食べる子供(体重20kg)はまずいない
と思ったからだろうなと。
マラチオンのARfD(急性参照用量)は2mg/kg 体重で、NOAEL(無毒性量)は15mg/kg 体重(ヒトでの値)。
15000ppm(≒15000mg/kg)のコロッケを一個(22g)食べたときのマラチオンの摂取量が330mg。
体重20kgの子供のNOAELが300mg。
誤って一個食べたとしてもNOAELを少し越す程度なので嘔吐や下痢なんかよりもやはり臭いによる気持ち悪さの方が先に立つんじゃないかなと思いました。
半数致死量を食べるためには該当商品を7袋半食べる必要があります。まずこんなに買いません。
成人の場合は体重60kgで換算するのでこの3倍量ですよね。180個。まあ普通はいっぺんに食えません。一袋(8個)をいっぺんに食べて嘔吐した事例がありましたが、最大でその程度だろうと。
子供が8個ぐらい食べたら中毒症状が出ると思いましたが「半分殺す気か」とは思いませんでした。
ARfDで判断すべき事例をなぜNOAELで評価してるのかについては、ARfDは商品回収の目安で、NOAELは実際に口にしてしまったときの危険性の目安で、私の中では双方別々の評価基準なのです。
もちろん、安全性を考慮して一般的にはARfDで評価するのが正しいです。
ただ、私のリスク感覚はそういうものだったので、、
説明の誤り、など生ぬるい表現だ。半数致死量を基に説明したのだから、「日本人の半数を殺す気か」くらいの勢いで怒っていいくらいのミス。
とは思わないんですよね。
というか「日本人の半数を殺す気か」という表現は実際のリスクの大きさから考えるとオーバーな気がします。
私は該当食品を食べたことがないし、180個も食べる気はありません。
「コロッケを60個食べた子供(20kg)や180個食べた大人(60kg)の半数を殺す気か」という表現はできるかなと思いますが。
それよりも私はむしろマスメディアに怒ってました。
アクリフーズの説明は本当にあってはいけないし、LD50で計算してしまうとはお粗末すぎます。ARfDは日本ではあまり馴染みのない基準値なので知らなかったとしても「ありえないでしょ」とは言えないなあと思っているのですが、そうであってもNOAELやADIで計算すべきでした。そうすればとんでもない量が混入されていたと正しく認識できたでしょうし、「60個食べないと~」という表現は出てこなかったでしょう。
ただ、会見の場に居合わせた記者は誰一人としてこの計算をおかしいと思わなかったのでしょうか。
記事にして公開する前に編集部の誰もおかしいと思わなかったのでしょうか。
毒性評価が正しく行われているかを確認するというのは、初歩的な事実確認の範疇だと思うのです。
報道では会見内容を忠実に伝えることも大事だと思うのですが、会見内容が事実であるか確認する責任も報道にはあるのではないかと思うのです。
もちろん、その場で「この計算はLD50を基に行われている…!」と気付けと言ってるわけじゃないですよ。私だってマラチオンのLD50はおろかADIもARfDも知りませんでした。
しかし、2200ppmとか15000ppmという数値を見て「そんなに余裕があるだろうか?」と思わなかったんだろうか、と疑問に思うのです。
もしかして、会見の場では記者は質問をできなかったのでしょうか。
アクリフーズに対して「日本人の半数を殺す気か」くらいの勢いで怒っていいのならば、マスメディアに対しては「日本人の半数を殺す片棒を担いだ共犯者」と怒っていいと思うのですよ。
だって無批判に右から左に流してただけですからね。報道ってそういうものなんですね。
その後もさらりと訂正会見があったことを報道してますけど、そもそもマスメディアがアクリフーズの説明を批判的に検証していればこんな恐ろしい情報が流れずに済んだと思いませんか。
この計算をやっちゃったアクリフーズの人が会見前に厚労省やマルハニチロに相談しなかったのは馬鹿だなあと思いますし、マニュアル外のことが起こったら素直に外に助けを求めなさいよと思いますけど、一番信用できないのはマスメディアだなあと思っちゃいましたよ。
これ、担当した人は食品報道したことがない人なんでしょうか。各社それぞれ。
農薬の基準値超過の場合、とりあえず計算してみようってならないんでしょうか。不思議。そういう習慣付けさせた方がいいですよ。そうしたら読者にどんな情報が必要かわかるでしょうから。
以上、私の怒りポイントでした。
長いことお疲れ様でした。
以下に「こうすればよかったんじゃないだろうか」ということを箇条書きにしていきます。
■アクリフーズやマルハニチロ、企業側に対して
・第一報の時点で警察に相談したいたことから、混入の可能性も視野に入れていたことがわかる。ならば「一度に○○個食べない限り」という表現は使ってはいけない。
・ARfDは日本では一般的な概念じゃないので知らないのは仕方ない。けれどLD50はない。ありえない。「一度に○○個~」という表現を使いたければADIで計算しよう。
■マスメディアに対して
・150万倍とか農薬の残留基準とか実際の数値がわからないような報道はやめて。
・15000ppm、残留基準値(0.01ppm)など書いてくれれば読者も理解できる。
・というか、事実確認する気がないのなら読者が事実確認できるように数値を載せて下さいマジで。
・食品関連の報道する記者の方は、こういう報道を見たら計算するクセをつけた方がいいんじゃないだろうか。自分の担当でなくても。
・こういうのは慣れなので。
■厚労省に対して
・GJでした。
・いつもADIで規制するのにARfDが出てくると思ってなくてすごくびっくりしてドキドキした。
・なんだか私の知ってる厚労省と違う。
・ポジティブリスト制度の一律基準値違反についてはARfDで評価しましょうよそうしましょう。
最後に。
今回の事件は、最初にまず「混入か」と思って「あ、まだ残留農薬の可能性があるのか」と思った後に実際の数値を見て「混入ですね」と思いました。現時点(1月21日)では残留農薬の可能性はほぼゼロと考えていいでしょう。
その理由は主に二つ。
原材料が汚染されていたのならば同一ラインが汚染されていたということなので、
・マラチオンが検出された製品がもっと見つかっていい
・検出された製品間での数値の差が100倍以上開くことは考えにくい
ということ。
すごく久しぶりにブログというものを書いたのでなんかまとまらない記事になっちゃいましたね。
めんどくさいなーと思ったのでまたブログから遠ざかりそうとかなんとか。
■以下、本文になくてもいいけど知ってると得する?予備知識
「残留農薬の基準の○○倍」という表現がなぜ役に立たないかというと、実は農薬の残留基準値は作物によってバラバラなのです。
たとえばマラチオンだとこんな感じ→マラチオンの基準値
作物によっては最大で8ppmまで残留しても違反ではないんですね。
報道で用いられる「残留農薬の基準値」という表現の9割(体感)がポジティブリスト制度による一律基準値のことを指しています。つまり0.01ppmです。(検出限界の関係でそれより大きいものもあります)
マラチオンの場合、同じ「残留農薬の基準値」でも最大値と最小値で800倍の差があります。
・0.01ppmの150万倍なら15000ppm
・8ppmの150万倍なら12000000ppm
その間に基準値はいくつもあります。
これでは値が一つに決まりませんね。
だからこういう表現の仕方はよくありません。インパクト重視なだけで情報すっかすか。
ではこうしたらどうでしょうか。
「残留農薬の基準値(0.01ppm)の150万倍が検出された」
冷凍食品には残留農薬の基準値なんてないのでもっとストレートに
「最大で15000ppmのマラチオンが検出された」
これならわかるよね?
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覚え書き程度に。
以下、強調は引用者による。
これが本当だったら酷い話ですよね。
業者が自主検査をしたら暫定規制値を超えていたので、静岡県に公表していいか問い合わせたら「いや、やめてほしい。最低限やってるんだからHPでやらなくてもいいだろう」と言われた。
そういう風に読めます。
多くの人が「隠蔽だ」「こういうことするから返って風評被害を招く」など言っていました。
私が最初に読んだときは「いくらなんでもそんなに愚かな真似をするだろうか?」という意識が最初に来たので、自主検査の精確さを疑ってしまいました。ごめんなさい。
ところで、めんどくさい人のために最初に結論を書いておきます。
静岡県に隠蔽する意図はありません。
後ほど詳しく説明しますが、知事が「検査なんかしないもん!」とダダをこねても、静岡県ではお茶(荒茶)の放射性物質の調査をしています。
さて、朝日の記事を読んで「おや?」と思いませんでした?
この記事からはどの野菜から放射性物質が検出されたかがまったくわからないんですね。
そりゃ、静岡ですからお茶だろうか?と推測はできますけども、普通は書くでしょう。みなさん、お茶とわかっていて憤っていらっしゃったのでしょうか。私は最初は野菜かと思いました(なので検査ミスかな、と)
何の製品だろう?と探していたあたりで47newsがツイートされてきたので読みました。
どうやら製茶だったようです。
お茶に関しては、生茶で測定するのか、荒茶で測定するのか、厚労省と農水省で意見が対立しましたね。
お茶の暫定規制値は結局、荒茶で測定することになりました。説明はこちらのブログ記事(生茶葉と荒茶の放射線規制値について考察)が詳しいと思います。
さて、赤字の部分を読み比べてほしいのですが、
朝日の「消費者への連絡など最低限のことはやっている。HPで出すとかえって不安を広げかねない」と、共同通信の「風評被害を考慮し、県として再度確認するので、公表を少し待ってほしい」ではだいぶ違う印象を受けます。
前者は、今後も公表するつもりはないと読めます。
後者は、再検査をしたら公表するつもりであると読めます。
はて?これはどちらが正しいのだろう?と思っていたら、どうやら後者が正しかったようです。
そうすると、特に隠蔽しようとする意図は見出せませんから、公表が遅れたことについてどう解釈するかになります。
以下におおまかな流れを書きます。
6月3日に、お茶での放射性セシウムの暫定規制値は荒茶あるいは製茶で測定すると報道されています。
静岡では生茶では規制値を超えていませんでした(生茶の測定結果)。
しかし6月6日に、業者が5月に出荷販売したものについて暫定規制値を超えていることがわかりましたので、静岡県に報告しました。
おそらくこれを受けて、製茶でも測定を行った結果、一部を除き規制値を超えたものはありませんでした(製茶の測定結果)。
一部、暫定規制値を超えているもの、これが今回報道されたものです。
これは6月9日に静岡県のHPに載っています。(更新日は10日ですが、9日の時点でオンラインブックマークがついています)
朝日新聞の報道は6月10日です(紙面に載ったとすれば6月9日の夕刊ぐらいだと思われます)。
静岡県では製茶での放射性物質の測定結果が6月7日から一部掲載されていますから、静岡県のHPを見ていれば隠蔽する意図があるとはとても読めないでしょう。
6月6日の時点で公表しようと思えばできたわけですが、それはどうなのでしょうか?
ところで、以下は朝日アピタルさんのつぶやきです。
あれだけ誤読させておいて「不安を広げないようにする施策が、逆に不安を広げてしまう好例」だって!?
朝日の記事でなくて共同通信の記事を読めば憤る人はもっと少なかったはずなんですよ。
あの記事はおそらく朝日アピタルが書いたわけではないので、こんな怒りをぶつけてもしょうがないのですが、正直にいいます。
私は、これを読んでイラッとしました(なので返信しました)
私は、朝日の記事は風評被害だと感じました。
不安を煽る書き方をしといて好例ですね、とかくぁwせdrftそりゃもうプンプン怒りました。
そこから私の最初のツイートに戻ります。
閑話休題。
今回、製茶で暫定規制値を超えてしまいましたので、県からは藁科地区の当該の業者に対して、製茶および原料の荒茶の出荷自粛・自主回収が要請されました。
暫定規制値を超えたら速やかに公表してほしい。
そのとおりです。
私も、暫定規制値を超えたものについては隠さず公表すべきであると思っています。
「らでぃっしゅぼーや」は自主検査の結果を受けて、静岡県の要求を尊重しつつ、製品を購入された顧客に対しては速やかに連絡をしており、取り扱いも中止しています。
しかし、業者に出荷自粛や製品回収を要請する前に、県がもう一度検査をしたいというのはただの時間稼ぎなのでしょうか?
生茶を加工して荒茶にすると放射性セシウムの濃度が約5倍濃縮されると言われています(リンク)。
ですが、静岡県の公表しているデータ(PDF)を見ますと、生茶から製茶へ加工する過程では、必ずしも5倍濃縮されるわけではないようです。おおよそ1.5~7倍と、濃縮率に差があります。ですので、仮に生茶でのデータがあっても、製茶で測定するまでは確かなことは言えませんから、即時出荷自粛を要請するのは難しいと思われます。
また、業者(らでぃっしゅぼーや)と県で、再検査が終わるまで公表を伸ばすことで合意が得られていますから、県が無茶苦茶な要求を叩きつけたわけでもないでしょう。
6月6日に報告を受けて9日に公表して10日に「隠蔽するのか」と叩かれる、これって正常なんでしょうか?
静岡県のお役人さんは公務員だからいわれのない批判をされてもいいんでしょうか?
ここまで読んでいただいて、それでもやっぱり静岡県は卑劣だ、と思われた方はどのくらいいらっしゃいますか?
この件では、出荷制限ではなくて、出荷自粛なのですよね。
おそらく、生茶葉では規制値をクリアしているからだと思います。
飲用するにあたっては生茶の10倍ほど希釈されますから、最低でも10倍程度希釈されると考えて良いと思います。今回、暫定規制値を超えたものは最大で679 Bq/kgでした。10倍に希釈されるのなら67.9 Bq/kgになります。飲料の規制値は200 Bq/kgですから、飲料用に売る分には、厳しい制限をつけられないのだろうと思われます。
ただし、飲用向け以外の出荷が3~4%あるとのことですから、そちらは実質、出荷できないのではないでしょうか(希釈されないので)。
難しいですよね。
県のお役人さんが業者の自主検査を信じてなかったわけではないと思うんですよ。
ただ、県から自粛を要請する以上は、ちゃんと検査をするべきだと思うんです。
あとで間違いでした、と言われて善意の業者(らでぃっしゅぼーや)が出してきたデータを信じただけだ、県に責任はない、なんて言われたら殴りますでしょ。
静岡県は日本の茶の約40%を生産していますから、ややナーバスになってもしょうがないかなと思います。
しかし、公表すべきことは公表しているみたいなので、少しくらい待ってあげてはどうでしょうか。
待てないほど喫緊の問題だったわけではないですよ。
以下、強調は引用者による。
放射性物質検出、静岡県が公表を制止 食品通販業者に(asahi.com) 静岡県が、自主検査で国の基準を超える放射性物質が検出されたとホームページ(HP)で公表しようとした東京都内の食品通販業者に、公表を控えるよう求めていたことが分かった。 有機野菜などの会員制宅配サービスを行う「らでぃっしゅぼーや」(東京都港区)。同社は自主検査で基準を超えたと6日に県に報告。この際、HPでの公表を県が控えるよう求めたという。同社は商品を購入した会員に、経緯と商品回収の意向を伝える手紙を郵送したという。 県経済産業部は「消費者への連絡など最低限のことはやっている。HPで出すとかえって不安を広げかねない」と説明している。(2011年6月10日4時15分) |
これが本当だったら酷い話ですよね。
業者が自主検査をしたら暫定規制値を超えていたので、静岡県に公表していいか問い合わせたら「いや、やめてほしい。最低限やってるんだからHPでやらなくてもいいだろう」と言われた。
そういう風に読めます。
多くの人が「隠蔽だ」「こういうことするから返って風評被害を招く」など言っていました。
私が最初に読んだときは「いくらなんでもそんなに愚かな真似をするだろうか?」という意識が最初に来たので、自主検査の精確さを疑ってしまいました。ごめんなさい。
ところで、めんどくさい人のために最初に結論を書いておきます。
静岡県に隠蔽する意図はありません。
後ほど詳しく説明しますが、知事が「検査なんかしないもん!」とダダをこねても、静岡県ではお茶(荒茶)の放射性物質の調査をしています。
静岡県が製茶の基準値越えの公表を制止した件について、http://t.co/f4KN6jX朝日の報道を見ると隠蔽しようとしたように見えるが、共同http://t.co/2q9r3bH、業者http://t.co/jnqPIevの報告を見ると再検査後に公表する予定だったことがわかる
さて、朝日の記事を読んで「おや?」と思いませんでした?
この記事からはどの野菜から放射性物質が検出されたかがまったくわからないんですね。
そりゃ、静岡ですからお茶だろうか?と推測はできますけども、普通は書くでしょう。みなさん、お茶とわかっていて憤っていらっしゃったのでしょうか。私は最初は野菜かと思いました(なので検査ミスかな、と)
何の製品だろう?と探していたあたりで47newsがツイートされてきたので読みました。
静岡県がHPでの公表制止 製茶の放射性物質検出で(共同通信) 静岡県産の製茶の自主検査で基準を超える放射性物質を検出した食品通販会社「らでぃっしゅぼーや」(東京)から、ホームページ(HP)での公表を相談された静岡県が、掲載を控えるよう求めていたことが10日、同社への取材で分かった。 同社によると、県に6日午前、製茶が基準を超えたと報告。HPに掲載すべきか相談したところ、県の担当者は「風評被害を考慮し、県として再度確認するので、公表を少し待ってほしい」と求めたという。 同社は購入済みの消費者には、検査結果や返品に応じる意向を記した手紙を郵送し対応した。 (2011/06/10 11:34) |
どうやら製茶だったようです。
お茶に関しては、生茶で測定するのか、荒茶で測定するのか、厚労省と農水省で意見が対立しましたね。
お茶の暫定規制値は結局、荒茶で測定することになりました。説明はこちらのブログ記事(生茶葉と荒茶の放射線規制値について考察)が詳しいと思います。
さて、赤字の部分を読み比べてほしいのですが、
朝日の「消費者への連絡など最低限のことはやっている。HPで出すとかえって不安を広げかねない」と、共同通信の「風評被害を考慮し、県として再度確認するので、公表を少し待ってほしい」ではだいぶ違う印象を受けます。
前者は、今後も公表するつもりはないと読めます。
後者は、再検査をしたら公表するつもりであると読めます。
はて?これはどちらが正しいのだろう?と思っていたら、どうやら後者が正しかったようです。
【震災関連:ぱれっと/商品】静岡県産煎茶で放射性物質が検出されましたのでご報告いたします。(らでぃっしゅぼーや) 該当産地のお茶(原発事故以降の新茶)につきましては、既に取扱を中止し、またご購入いただいた会員様には速達のお手紙でご連絡申し上げております。また、当社から静岡県に対しても検査結果を伝えており、静岡県においても該当産地の製茶の検査を行っていただいております。本件につきましては風評被害につながる恐れもあることから、静岡県による検査と当社による再検査の結果を待って公表させていただく予定になっておりました。 |
そうすると、特に隠蔽しようとする意図は見出せませんから、公表が遅れたことについてどう解釈するかになります。
以下におおまかな流れを書きます。
6月3日に、お茶での放射性セシウムの暫定規制値は荒茶あるいは製茶で測定すると報道されています。
静岡では生茶では規制値を超えていませんでした(生茶の測定結果)。
しかし6月6日に、業者が5月に出荷販売したものについて暫定規制値を超えていることがわかりましたので、静岡県に報告しました。
おそらくこれを受けて、製茶でも測定を行った結果、一部を除き規制値を超えたものはありませんでした(製茶の測定結果)。
一部、暫定規制値を超えているもの、これが今回報道されたものです。
これは6月9日に静岡県のHPに載っています。(更新日は10日ですが、9日の時点でオンラインブックマークがついています)
朝日新聞の報道は6月10日です(紙面に載ったとすれば6月9日の夕刊ぐらいだと思われます)。
静岡県では製茶での放射性物質の測定結果が6月7日から一部掲載されていますから、静岡県のHPを見ていれば隠蔽する意図があるとはとても読めないでしょう。
6月6日の時点で公表しようと思えばできたわけですが、それはどうなのでしょうか?
ところで、以下は朝日アピタルさんのつぶやきです。
不安を広げないようにする施策が、逆に不安を広げてしまう好例ですね/放射性物質検出、静岡県が公表を制止 食品通販業者に http://t.asahi.com/2syw #genpatsu
あれだけ誤読させておいて「不安を広げないようにする施策が、逆に不安を広げてしまう好例」だって!?
朝日の記事でなくて共同通信の記事を読めば憤る人はもっと少なかったはずなんですよ。
あの記事はおそらく朝日アピタルが書いたわけではないので、こんな怒りをぶつけてもしょうがないのですが、正直にいいます。
私は、これを読んでイラッとしました(なので返信しました)
私は、朝日の記事は風評被害だと感じました。
・規制値を超えたのが製茶であることを伝えていないこと ・静岡県は公表するつもりであり、記事がネットで公開された時点では公表されていたにも関わらず、静岡県が意図的に隠蔽したように誤読させうる文章を書いた(というか、たいていの人はそう読んだ) |
不安を煽る書き方をしといて好例ですね、とかくぁwせdrftそりゃもうプンプン怒りました。
そこから私の最初のツイートに戻ります。
閑話休題。
今回、製茶で暫定規制値を超えてしまいましたので、県からは藁科地区の当該の業者に対して、製茶および原料の荒茶の出荷自粛・自主回収が要請されました。
暫定規制値を超えたら速やかに公表してほしい。
そのとおりです。
私も、暫定規制値を超えたものについては隠さず公表すべきであると思っています。
「らでぃっしゅぼーや」は自主検査の結果を受けて、静岡県の要求を尊重しつつ、製品を購入された顧客に対しては速やかに連絡をしており、取り扱いも中止しています。
しかし、業者に出荷自粛や製品回収を要請する前に、県がもう一度検査をしたいというのはただの時間稼ぎなのでしょうか?
生茶を加工して荒茶にすると放射性セシウムの濃度が約5倍濃縮されると言われています(リンク)。
ですが、静岡県の公表しているデータ(PDF)を見ますと、生茶から製茶へ加工する過程では、必ずしも5倍濃縮されるわけではないようです。おおよそ1.5~7倍と、濃縮率に差があります。ですので、仮に生茶でのデータがあっても、製茶で測定するまでは確かなことは言えませんから、即時出荷自粛を要請するのは難しいと思われます。
また、業者(らでぃっしゅぼーや)と県で、再検査が終わるまで公表を伸ばすことで合意が得られていますから、県が無茶苦茶な要求を叩きつけたわけでもないでしょう。
6月6日に報告を受けて9日に公表して10日に「隠蔽するのか」と叩かれる、これって正常なんでしょうか?
静岡県のお役人さんは公務員だからいわれのない批判をされてもいいんでしょうか?
ここまで読んでいただいて、それでもやっぱり静岡県は卑劣だ、と思われた方はどのくらいいらっしゃいますか?
この件では、出荷制限ではなくて、出荷自粛なのですよね。
おそらく、生茶葉では規制値をクリアしているからだと思います。
飲用するにあたっては生茶の10倍ほど希釈されますから、最低でも10倍程度希釈されると考えて良いと思います。今回、暫定規制値を超えたものは最大で679 Bq/kgでした。10倍に希釈されるのなら67.9 Bq/kgになります。飲料の規制値は200 Bq/kgですから、飲料用に売る分には、厳しい制限をつけられないのだろうと思われます。
ただし、飲用向け以外の出荷が3~4%あるとのことですから、そちらは実質、出荷できないのではないでしょうか(希釈されないので)。
難しいですよね。
県のお役人さんが業者の自主検査を信じてなかったわけではないと思うんですよ。
ただ、県から自粛を要請する以上は、ちゃんと検査をするべきだと思うんです。
あとで間違いでした、と言われて善意の業者(らでぃっしゅぼーや)が出してきたデータを信じただけだ、県に責任はない、なんて言われたら殴りますでしょ。
静岡県は日本の茶の約40%を生産していますから、ややナーバスになってもしょうがないかなと思います。
しかし、公表すべきことは公表しているみたいなので、少しくらい待ってあげてはどうでしょうか。
待てないほど喫緊の問題だったわけではないですよ。
先日のエントリ「農水省が野菜の産地表示を止めていい」という通達を出したという噂についてから続いています。
先日のエントリでわかりにくいところがあったら教えてください、とお願いしたところ、エントリにまとめていただきましたのでお返事させていただきます。
本来ならばコメント欄でお返事させていただくのですが、同じような誤解をしている方のためにエントリにしました。ご了承ください。
また、「国産」表示に関して詳しく知りたい方は****************の間を飛ばしていただいて構いません。
*************************************************************************************************
返答エントリを書いていただきありがとうございます。
このように「どこがわかりづらかったか」を教えていただけると次にエントリを書くときの参考になりますので本当に助かります。
ここの部分、従来の法規では「都道府県名での原産地表示」が義務化されております。
「市町村名」までの表示を行うことは「可能」ですが、ここの部分は任意であり義務ではありません。
よって、文書の意図は、「従来通りの県単位の表記ではなく、手間をかけますがさらに細かく市町村単位で表示してもらえると助かります」という意味になります。
手間=コストがかかるので、強制的な命令は行えず「依頼」という形になっています。
従来通りではないからこそ、通達をしているわけですね。
「御配慮ください」について、確かに私もわかりにくな、と思います。
しかし、産地表示を細かくすることで対応する小売店もいるでしょうし、義務でない以上、産地表示を細かくせずに仕入れを行う産地を切り替えることで対応する小売店もあるでしょう。また、ポップやシールでの表示を切り替えず、消費者から質問された場合に詳しい産地を提示する、という選択肢もあります。
それら複数の選択肢がある中で「市町村単位で細かく対応してください」と対応を「限定」してしまうことは「協力依頼」という拘束力の弱い通達では不可能です。
「御配慮ください」の本来の対象は消費者ですが、通達自体が小売店側に配慮されているものなのです。
「一般的に知られている地名」とは具体的に、
等が考えられるそうです。
【追記】ohira-yさんに「旧国名の表示も現在の複数の県にまたがる場合は不可です。(肥前とか)都道府県別損なわれるから。」と教えていただきました。やはり都道府県よりも大きなくくりにすることはできないようです。
そもそも「一般的に知られている地名」なのに県名隠しにあたるのでしょうか?
調べればすぐにわかると思うのです。
これを「国産」と書いてしまうと産地がわからなくなってしまいますが、会津産と書いてあって北海道産だ、と考える人はどのくらいいるのでしょうか?
他の方のご意見も伺いましたが、この通達文書はプロ(農水省)からプロ(小売販売業者)への通達なので、この程度でも十分に意図は通じること、表示ルールは法律により規定されていますので、意図が把握できなかった場合は担当部署に確認するのが当たり前だろう、とのころでした。
私もそう思います。
Twitterを眺めていた限り、ちゃんと文章を読んだ人は正しく理解していました。
そもそもタイトルも「市町村単位等県を分割した区域ごとに行う出荷制限等への対応について(協力依頼)
」なのですからもう一度先入観を排除して意味の繋がりを考えながら元の通達文書(PDF)を読んでみてください。
ただし、意図的であれ非意図的であれ、適正な表示を完璧に守ることはそこそこ難しいようです。
平成20年度の統計になりますが、生鮮食品及び加工食品の品質表示が適正に行われているかを調べたところ、原産地については84.6%が適正な表示を行っていたそうです。裏を返せば15.4%の店舗では不適正な表示もあったわけです。
以上です。
私のつたない説明では理解に至らないところもありましたでしょうが、今後も多くの方に伝わるようなエントリを書きたいと思います。
*************************************************************************************************
さて、続いて「国産」表示が増えているという報告が少なからずありますのでそれについてもお答えします。
生鮮食品の原産地の表示について簡易ではありますが表にまとめてみました。
見にくい場合はこちらのリンク先をご覧ください。
畜産物に関する報告が結構ありますが、畜産物は元々「国産」で構わないのです。
それを知らない人が『見に行ったら「国産」になってた!』と騒いでいるのを見るとちょっと滑稽だなと感じてしまいます。「国産」の表示が偽装だと騒ぐ前に、本来のルールはどのようになっているかを調べるのが先ではないでしょうか?
少しお高くなりますが、産地名を冠したブランド肉(宮崎牛や名古屋コーチンなど)がありますので、どうしても細かい産地がわからないと嫌だという方はそちらをお買い求めになるのが確実かと思われます。
【追記】書こうと思ってすっかり忘れていましたが、国産牛に関しては2001年のBSE騒動を受けて個体識別番号が振られるようになりました。牛肉のパックに10桁の番号とバーコードがあると思います。
その番号を牛の個体識別情報検索サービスに入力することで飼育地域等を検索することができます。
農産物については都道府県名を表示することになっていますから、産地が不明であるときは店員さんに訊ねてみると良いでしょう。
ポップに複数産地(「香川産、茨城産」等)を表示することについて「混ぜ売り」だとおっしゃる方がいますが、これもルール上認められた正しい方法です。
現行の規定では、特売品などで山積み販売を行う場合、複数産地の商品を同時に扱う場合は原産地を全て記載することになっています。ただし、特売品は飛ぶように売れるので、常に多い順に表示するのは難しいようです。
この場合でも「香川産、茨城産」という表示は認められますが、「香川産、他」という表示は認められません。生鮮食品の場合はすべての産地の表示を行わなければいけません。
ポップと個別包装の表示が違う場合について、消費者が正確に判断を下せる状況にないので、その場合は店員さんに訊ねてみて、間違った方を訂正してもらってください。
(参考:厚生労働省の生鮮食品の表示についてのアンケート)
次に加工品について。
「加工食品品質表示基準」(PDF)より必要な部分だけ説明します。
その際、農産物に関しては都道府県名その他一般に知られている地名を書くこともできます。畜産物も同様です。
具体例を以下にまとめました。
見にくい場合はこちらの表示をご覧ください。
ここまで読んでいただいて、それでも「やっぱり表示がおかしい!」というときは、食品表示110番にご連絡ください。
先ほども示しましたが、食品の原産地が100%完璧に記載できているかというとそうではありません。しかし、積極的な偽装というよりは過失・間違いである場合の方が多いと思います。まずは小売店側に確認を取り、正しい情報提示を心がけてもらうようにしましょう。
最後に。
私が言いたいことは2点です。
・産地を偽装してはいけません
・農水省はそのような指導しませんしできません。
(暗示的な意味でもできません。法律=ここではJAS法の方が規律として上位なので)
確かに、産地を正しく表示しない小売店がいるかもしれません(主に故意ではなく過失で)。ただし、それを農水省が指示した、あるいは許したなどという陰謀論にくっつけてはいけません。
あと、農水省が他に行っている対応がクソいことと、ルールを捻じ曲げることを混同するのもダメです。
消費者である私たちも、正しく冷静に判断するように心がけましょう。
JAS法は「品質に関する適正な表示」「消費者の商品選択に資するための情報表示」をを目的としている法律です。
食品表示にはこのほかにも食品衛生法による表示ルールもあり、こちらは「飲食に起因する衛生上の危害発生の防止」を目的としています。
せっかく食品表示に興味を持ったのですから、少し勉強してみるのも良いと思います。
以下に参考リンクを載せておきますので一緒にどうぞ。
本文以外の参考リンク:
【PDF】知っておきたい食品の表示(消費者庁)
食品表示ガイドブック(福井県)←文字が小さいの残念ですけどおすすめ!
【追記】
ツイッターで農畜産物の放射線の測定値が知りたいという意見を見ました。
調べればいいのに、というのは簡単ですが、私もあまり気にしていなかったのでプチリンク集を作ることにしました。
測定値は自分で見てね。
≪農産物および畜産物の放射性物質の計測結果≫
・福島県
・茨城県
・栃木県
・群馬県
・埼玉県
・千葉県
・その他の地域は経産省の放射線計測値のページから飛んで探してください。
【追記】
(財)食品流通構造改善促進機構が公開している食品の放射能検査データというデータベースを教えていただきました。
さっそく使ってみましたが、感覚的に使えて、しかも視覚的に把握できるのでわかりやすいです。
良いものを教えてもらいました。ありがとうございます。
さらっと見た感じ、ほとんどの地域でND(検出限界未満)とか低い値なんですけど「一時期制限されていた」というだけで避けられるのは残念かもしれませんね。
あとは賢い消費者のみなさまが測定値と相談してご自分の生活スタイルと相談してお買い物をお楽しみください。
先日のエントリでわかりにくいところがあったら教えてください、とお願いしたところ、エントリにまとめていただきましたのでお返事させていただきます。
本来ならばコメント欄でお返事させていただくのですが、同じような誤解をしている方のためにエントリにしました。ご了承ください。
また、「国産」表示に関して詳しく知りたい方は****************の間を飛ばしていただいて構いません。
*************************************************************************************************
返答エントリを書いていただきありがとうございます。
このように「どこがわかりづらかったか」を教えていただけると次にエントリを書くときの参考になりますので本当に助かります。
リンク先のエントリー記事によると、実際の文書意図は「(従来の法規どおり)市町村単位の原産地表示をしてね」という意味 http://d.hatena.ne.jp/p_wiz/20110521/p2 |
ここの部分、従来の法規では「都道府県名での原産地表示」が義務化されております。
「市町村名」までの表示を行うことは「可能」ですが、ここの部分は任意であり義務ではありません。
よって、文書の意図は、「従来通りの県単位の表記ではなく、手間をかけますがさらに細かく市町村単位で表示してもらえると助かります」という意味になります。
手間=コストがかかるので、強制的な命令は行えず「依頼」という形になっています。
従来通りではないからこそ、通達をしているわけですね。
「御配慮ください」について、確かに私もわかりにくな、と思います。
しかし、産地表示を細かくすることで対応する小売店もいるでしょうし、義務でない以上、産地表示を細かくせずに仕入れを行う産地を切り替えることで対応する小売店もあるでしょう。また、ポップやシールでの表示を切り替えず、消費者から質問された場合に詳しい産地を提示する、という選択肢もあります。
それら複数の選択肢がある中で「市町村単位で細かく対応してください」と対応を「限定」してしまうことは「協力依頼」という拘束力の弱い通達では不可能です。
「御配慮ください」の本来の対象は消費者ですが、通達自体が小売店側に配慮されているものなのです。
「県名を省けますよ」という部分を一般国民に知らせずに、業者のみに伝わるように書いた通知にも読めます http://d.hatena.ne.jp/p_wiz/20110521/p2 |
「一般的に知られている地名」とは具体的に、
(1)郡名 (2)一般に知られている旧国名(例丹波、土佐等) (3)一般に知られている旧国名の別称(例信州、甲州等) (4)その他一般に知られている地名(例房総、屋久島等) 参考:生鮮食品品質表示基準Q&A(PDF) |
等が考えられるそうです。
【追記】ohira-yさんに「旧国名の表示も現在の複数の県にまたがる場合は不可です。(肥前とか)都道府県別損なわれるから。」と教えていただきました。やはり都道府県よりも大きなくくりにすることはできないようです。
そもそも「一般的に知られている地名」なのに県名隠しにあたるのでしょうか?
調べればすぐにわかると思うのです。
これを「国産」と書いてしまうと産地がわからなくなってしまいますが、会津産と書いてあって北海道産だ、と考える人はどのくらいいるのでしょうか?
他の方のご意見も伺いましたが、この通達文書はプロ(農水省)からプロ(小売販売業者)への通達なので、この程度でも十分に意図は通じること、表示ルールは法律により規定されていますので、意図が把握できなかった場合は担当部署に確認するのが当たり前だろう、とのころでした。
私もそう思います。
Twitterを眺めていた限り、ちゃんと文章を読んだ人は正しく理解していました。
そもそもタイトルも「市町村単位等県を分割した区域ごとに行う出荷制限等への対応について(協力依頼)
」なのですからもう一度先入観を排除して意味の繋がりを考えながら元の通達文書(PDF)を読んでみてください。
ただし、意図的であれ非意図的であれ、適正な表示を完璧に守ることはそこそこ難しいようです。
平成20年度の統計になりますが、生鮮食品及び加工食品の品質表示が適正に行われているかを調べたところ、原産地については84.6%が適正な表示を行っていたそうです。裏を返せば15.4%の店舗では不適正な表示もあったわけです。
以上です。
私のつたない説明では理解に至らないところもありましたでしょうが、今後も多くの方に伝わるようなエントリを書きたいと思います。
*************************************************************************************************
さて、続いて「国産」表示が増えているという報告が少なからずありますのでそれについてもお答えします。
生鮮食品の原産地の表示について簡易ではありますが表にまとめてみました。
見にくい場合はこちらのリンク先をご覧ください。
畜産物に関する報告が結構ありますが、畜産物は元々「国産」で構わないのです。
それを知らない人が『見に行ったら「国産」になってた!』と騒いでいるのを見るとちょっと滑稽だなと感じてしまいます。「国産」の表示が偽装だと騒ぐ前に、本来のルールはどのようになっているかを調べるのが先ではないでしょうか?
少しお高くなりますが、産地名を冠したブランド肉(宮崎牛や名古屋コーチンなど)がありますので、どうしても細かい産地がわからないと嫌だという方はそちらをお買い求めになるのが確実かと思われます。
【追記】書こうと思ってすっかり忘れていましたが、国産牛に関しては2001年のBSE騒動を受けて個体識別番号が振られるようになりました。牛肉のパックに10桁の番号とバーコードがあると思います。
その番号を牛の個体識別情報検索サービスに入力することで飼育地域等を検索することができます。
農産物については都道府県名を表示することになっていますから、産地が不明であるときは店員さんに訊ねてみると良いでしょう。
ポップに複数産地(「香川産、茨城産」等)を表示することについて「混ぜ売り」だとおっしゃる方がいますが、これもルール上認められた正しい方法です。
現行の規定では、特売品などで山積み販売を行う場合、複数産地の商品を同時に扱う場合は原産地を全て記載することになっています。ただし、特売品は飛ぶように売れるので、常に多い順に表示するのは難しいようです。
この場合でも「香川産、茨城産」という表示は認められますが、「香川産、他」という表示は認められません。生鮮食品の場合はすべての産地の表示を行わなければいけません。
ポップと個別包装の表示が違う場合について、消費者が正確に判断を下せる状況にないので、その場合は店員さんに訊ねてみて、間違った方を訂正してもらってください。
(参考:厚生労働省の生鮮食品の表示についてのアンケート)
次に加工品について。
「加工食品品質表示基準」(PDF)より必要な部分だけ説明します。
「原料原産地名」について、主な原材料(原材料に占める重量の割合が最も多い生鮮食品で、かつ、当該割合が50%以上であるもの)について国産品ならば国産である旨を表示すること。 |
その際、農産物に関しては都道府県名その他一般に知られている地名を書くこともできます。畜産物も同様です。
具体例を以下にまとめました。
見にくい場合はこちらの表示をご覧ください。
ここまで読んでいただいて、それでも「やっぱり表示がおかしい!」というときは、食品表示110番にご連絡ください。
先ほども示しましたが、食品の原産地が100%完璧に記載できているかというとそうではありません。しかし、積極的な偽装というよりは過失・間違いである場合の方が多いと思います。まずは小売店側に確認を取り、正しい情報提示を心がけてもらうようにしましょう。
最後に。
私が言いたいことは2点です。
・産地を偽装してはいけません
・農水省はそのような指導しませんしできません。
(暗示的な意味でもできません。法律=ここではJAS法の方が規律として上位なので)
確かに、産地を正しく表示しない小売店がいるかもしれません(主に故意ではなく過失で)。ただし、それを農水省が指示した、あるいは許したなどという陰謀論にくっつけてはいけません。
あと、農水省が他に行っている対応がクソいことと、ルールを捻じ曲げることを混同するのもダメです。
消費者である私たちも、正しく冷静に判断するように心がけましょう。
JAS法は「品質に関する適正な表示」「消費者の商品選択に資するための情報表示」をを目的としている法律です。
食品表示にはこのほかにも食品衛生法による表示ルールもあり、こちらは「飲食に起因する衛生上の危害発生の防止」を目的としています。
せっかく食品表示に興味を持ったのですから、少し勉強してみるのも良いと思います。
以下に参考リンクを載せておきますので一緒にどうぞ。
本文以外の参考リンク:
【PDF】知っておきたい食品の表示(消費者庁)
食品表示ガイドブック(福井県)←文字が小さいの残念ですけどおすすめ!
【追記】
ツイッターで農畜産物の放射線の測定値が知りたいという意見を見ました。
調べればいいのに、というのは簡単ですが、私もあまり気にしていなかったのでプチリンク集を作ることにしました。
測定値は自分で見てね。
≪農産物および畜産物の放射性物質の計測結果≫
・福島県
・茨城県
・栃木県
・群馬県
・埼玉県
・千葉県
・その他の地域は経産省の放射線計測値のページから飛んで探してください。
【追記】
(財)食品流通構造改善促進機構が公開している食品の放射能検査データというデータベースを教えていただきました。
さっそく使ってみましたが、感覚的に使えて、しかも視覚的に把握できるのでわかりやすいです。
良いものを教えてもらいました。ありがとうございます。
さらっと見た感じ、ほとんどの地域でND(検出限界未満)とか低い値なんですけど「一時期制限されていた」というだけで避けられるのは残念かもしれませんね。
あとは賢い消費者のみなさまが測定値と相談してご自分の生活スタイルと相談してお買い物をお楽しみください。
「スーパーや小売店に産地表示をするなという指示が農水省から出ている」
という話(情報元はここかしら?)をTwitter経由で知ったのですが、実際の文書(PDF)を読んでみますとそれが間違いであることがわかりました。
もう収束段階にあるかと思うのですが、このブログでは一応食品関係を扱っていますので、記録としてエントリにしておきます。
まず始めに結論を書きます。
・この通達は4月5日に行われたものであり、4月7日には一部でニュースとして取り上げられています。
・5月20日の正午頃には農水省に確認された方がいます。
以上です。
というか、私にはこれ以外の含意は拾えません。
なぜそう読めるのか不思議なくらい。
でも、なぜありもしない意図を読み取ってしまったのか、少しわかった気がするので解説します。
まず、元の文書を読んでみます。
簡単に要約しますと以下のようになります。
みなさんの中には、4月以降、野菜を買うときに産地表記に「茨城県産」だけでなく「茨城県〇〇市産」が増えたと感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
4月4日から、出荷制限を県単位ではなく市町村やブロック分けした地域で小分けにしたため、小売店での表示もそれに対応して市町村やブロック分けした地域での表示になりました。そのお願いが先ほどの農水省の通達なのですね。
放射性物質が観測されて以降、国が県単位での出荷制限を行ったため、暫定基準値として問題ない地域の農産物も出荷制限され、風評被害につながりかねないと言われたことは記憶に新しいですね。
このとき、県単位の制限ではなく、さらに区分けした制限を行ったことに対して不満は出なかったように感じているのですが、みなさん、どうだったでしょう?
なぜ今になって噴き上がるのか、私には理解できません。
さて、それではどうしてみなさんが間違えたかというと、省略された前提を踏まえていなかったからです。もっと意地悪くいうならば「国がやることは全部ダメだ」という先入観があるからでしょうか。
野菜(生鮮食品)の産地表示はJAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)に基づいてJAS規格が定められています。
その中に「生鮮食品品質表示基準」(PDF)という規格がありますが、これの農産物の項目を見てください。
第3条では、表示すべき事項として「名称」と「原産地」を挙げています。
では「原産地」とは具体的にどういうものかと言いますと、第4条に野菜(農産物)について書かれています。
野菜は基本的には県単位の表示をしなければならないと決められているのですね。
これは第3条からもわかる通り、義務表示です。
では、記載を省略できる場合とは具体的にどういう場合かというと、たとえば長野県ではきのこ類は「信州産」として売られています。このように一般的に知られている地名を用いる場合、「長野県産」の都道府県表示を省略できます。
他にも、たとえば「カリフォルニア産」のオレンジがあった場合、原産国の「アメリカ産」を省略できます。
つまり、より詳細に記述することで大きなくくりを省略できますよ、ということです。
ここまで書けばわかってもらえると思うのですが、県単位よりも大きなくくりの「国産」にすることはできません。
結論として、農水省から食品小売業界に出された通達であるために、
という前提を消費者が知らなかったということです。
この前提を知っていたのに誤読したのならば、やはり国語をやり直すかあなたのバイアスに自覚的になるべきだと思います。
JAS規格を読んでもわかる通り、国産品は市町村名を書くことが認められています。また、それが一般的に知られている地名であれば都道府県名を省略できます。
しかし、ここからが小売店の事情になるのですが、同じ日でも午前と午後で違う産地の野菜が届くことがありますし、市町村単位だったらなおさらです。つまり、ラベル貼りとか売り場の表示が大変なのですね。
ですから、小売店には大変な仕事かもしれないけれど、消費者の知る権利や生産者への風当たりを小さくするために小売店も市町村単位の産地表示に協力してもらえると助かる、という通達なのです。
しかし、こういう前提を知らない人からしたら「御配慮をお願いいたします」が違う意味に見えたのかもしれませんね。
ですが、これは農水省から小売店への通達ですし、消費者に見えていない前提条件を両者が共有しているわけですから問題のない通達に思えます。そして、私はそのどちらでもありませんが、生鮮食品の原産地表示について知っているので、通達を素直に読むことができました。
法律の範囲内で通達の内容を解釈するならば「市町村単位での記載をお願いしたい」という意味にしか取れません。というか、この通達の内容が「市町村単位での記載をお願いしたい」であることをみなさんはスーパーなどで見ていらっしゃいますよね?ご存じない方はスーパーに行って野菜の産地表示を見てください。
最後に、当たり前のことで大変恐縮なのですが、
「そんなことやるなんてバカじゃないの?」
と私たちが思うことは、お役人さんだって「バカじゃないの?」って思います。
だって彼らは一応プロなのですから。
なので、まず憤る前に「そんなこと」が行われたのかを確認してください。
また、消費者庁の介入によりJAS法違反(常習性がなくて過失による一時的なもの)の指導も強化されています(PDF)ので、産地表示をJASの規格に沿わない形に変更した場合は店頭で謝罪文の掲載やHPでの通知を行う必要が出てきます。
おまけ
調べてて思ったのですが、消費者庁の出したこの通達と混同された方もいらしたのかな?とも感じました。
東日本大震災を受けた食品表示の運用について(消費者庁)
この通達は被災地域において、食品表示を行うことが食品流通の妨げになる場合、問題が生じない軽微な違いあるいは誤解を招かない場合に限り、記載と違っても取り締まりを行わないので円滑な流通を優先させること、という通達です。(悪質な場合はもちろん罰せられます)
東京周辺も確かに被災地ですが、食品の流通は特に問題になっていませんのでこの通達の地域には含まれないでしょう(小売店で何不自由なく購入できる時点で流通に問題がないことは明らかでしょう)。
あと、畜産物と農産物、加工品では原産地の記載のルールが違いますので、こちらをよくご覧ください。
関連の法律を見てもなお、表示に問題がある場合にはお近くの消費者センター、消費者庁あるいは農水省など関連施設に連絡しましょう。
続き→生鮮食品の原産地表示もう少しだけ詳しく説明してみる(azure blue)
という話(情報元はここかしら?)をTwitter経由で知ったのですが、実際の文書(PDF)を読んでみますとそれが間違いであることがわかりました。
もう収束段階にあるかと思うのですが、このブログでは一応食品関係を扱っていますので、記録としてエントリにしておきます。
まず始めに結論を書きます。
・この通達は4月5日に行われたものであり、4月7日には一部でニュースとして取り上げられています。
・5月20日の正午頃には農水省に確認された方がいます。
農水省食料局流通課に電話で確認しました。ここでいう「産地名の掲示等についての配慮」とは、「市町村単位でできるだけ表示して欲しい。消費者からの質問にも答えられるようにして欲しい」という意味だそうです。良かった。 http://bit.ly/kuqenZ
というか、私にはこれ以外の含意は拾えません。
なぜそう読めるのか不思議なくらい。
でも、なぜありもしない意図を読み取ってしまったのか、少しわかった気がするので解説します。
まず、元の文書を読んでみます。
簡単に要約しますと以下のようになります。
・放射性物質による汚染により県単位での出荷制限をしてきたが、4月4日にこの区分けを細かく市町村あるいは地域単位で行うことにした。 ・農水省は放射性物質の検査結果やそれに基づく出荷制限情報を出しているが、それも市町村単位等で行う。 ・消費者が「検査結果を知ることができるように」野菜等の販売時において産地名も検査の区分けにならうようにお願いしたい。 |
みなさんの中には、4月以降、野菜を買うときに産地表記に「茨城県産」だけでなく「茨城県〇〇市産」が増えたと感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
4月4日から、出荷制限を県単位ではなく市町村やブロック分けした地域で小分けにしたため、小売店での表示もそれに対応して市町村やブロック分けした地域での表示になりました。そのお願いが先ほどの農水省の通達なのですね。
放射性物質が観測されて以降、国が県単位での出荷制限を行ったため、暫定基準値として問題ない地域の農産物も出荷制限され、風評被害につながりかねないと言われたことは記憶に新しいですね。
このとき、県単位の制限ではなく、さらに区分けした制限を行ったことに対して不満は出なかったように感じているのですが、みなさん、どうだったでしょう?
なぜ今になって噴き上がるのか、私には理解できません。
さて、それではどうしてみなさんが間違えたかというと、省略された前提を踏まえていなかったからです。もっと意地悪くいうならば「国がやることは全部ダメだ」という先入観があるからでしょうか。
野菜(生鮮食品)の産地表示はJAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)に基づいてJAS規格が定められています。
その中に「生鮮食品品質表示基準」(PDF)という規格がありますが、これの農産物の項目を見てください。
第3条では、表示すべき事項として「名称」と「原産地」を挙げています。
では「原産地」とは具体的にどういうものかと言いますと、第4条に野菜(農産物)について書かれています。
ア 農産物 国産品にあっては都道府県名を、輸入品にあっては原産国名を記載すること。ただし、国産品にあっては市町村名その他一般に知られている地名を、輸入品にあっては一般に知られている地名を原産地として記載することができる。この場合においては、都道府県名又は原産国名の記載を省略することができる。 |
野菜は基本的には県単位の表示をしなければならないと決められているのですね。
これは第3条からもわかる通り、義務表示です。
では、記載を省略できる場合とは具体的にどういう場合かというと、たとえば長野県ではきのこ類は「信州産」として売られています。このように一般的に知られている地名を用いる場合、「長野県産」の都道府県表示を省略できます。
他にも、たとえば「カリフォルニア産」のオレンジがあった場合、原産国の「アメリカ産」を省略できます。
つまり、より詳細に記述することで大きなくくりを省略できますよ、ということです。
ここまで書けばわかってもらえると思うのですが、県単位よりも大きなくくりの「国産」にすることはできません。
結論として、農水省から食品小売業界に出された通達であるために、
・生鮮食品には産地名を表記しなければならない ・国産野菜は都道府県名を記載すること |
という前提を消費者が知らなかったということです。
この前提を知っていたのに誤読したのならば、やはり国語をやり直すかあなたのバイアスに自覚的になるべきだと思います。
JAS規格を読んでもわかる通り、国産品は市町村名を書くことが認められています。また、それが一般的に知られている地名であれば都道府県名を省略できます。
しかし、ここからが小売店の事情になるのですが、同じ日でも午前と午後で違う産地の野菜が届くことがありますし、市町村単位だったらなおさらです。つまり、ラベル貼りとか売り場の表示が大変なのですね。
ですから、小売店には大変な仕事かもしれないけれど、消費者の知る権利や生産者への風当たりを小さくするために小売店も市町村単位の産地表示に協力してもらえると助かる、という通達なのです。
しかし、こういう前提を知らない人からしたら「御配慮をお願いいたします」が違う意味に見えたのかもしれませんね。
ですが、これは農水省から小売店への通達ですし、消費者に見えていない前提条件を両者が共有しているわけですから問題のない通達に思えます。そして、私はそのどちらでもありませんが、生鮮食品の原産地表示について知っているので、通達を素直に読むことができました。
法律の範囲内で通達の内容を解釈するならば「市町村単位での記載をお願いしたい」という意味にしか取れません。というか、この通達の内容が「市町村単位での記載をお願いしたい」であることをみなさんはスーパーなどで見ていらっしゃいますよね?ご存じない方はスーパーに行って野菜の産地表示を見てください。
最後に、当たり前のことで大変恐縮なのですが、
「そんなことやるなんてバカじゃないの?」
と私たちが思うことは、お役人さんだって「バカじゃないの?」って思います。
だって彼らは一応プロなのですから。
なので、まず憤る前に「そんなこと」が行われたのかを確認してください。
また、消費者庁の介入によりJAS法違反(常習性がなくて過失による一時的なもの)の指導も強化されています(PDF)ので、産地表示をJASの規格に沿わない形に変更した場合は店頭で謝罪文の掲載やHPでの通知を行う必要が出てきます。
おまけ
調べてて思ったのですが、消費者庁の出したこの通達と混同された方もいらしたのかな?とも感じました。
東日本大震災を受けた食品表示の運用について(消費者庁)
この通達は被災地域において、食品表示を行うことが食品流通の妨げになる場合、問題が生じない軽微な違いあるいは誤解を招かない場合に限り、記載と違っても取り締まりを行わないので円滑な流通を優先させること、という通達です。(悪質な場合はもちろん罰せられます)
東京周辺も確かに被災地ですが、食品の流通は特に問題になっていませんのでこの通達の地域には含まれないでしょう(小売店で何不自由なく購入できる時点で流通に問題がないことは明らかでしょう)。
あと、畜産物と農産物、加工品では原産地の記載のルールが違いますので、こちらをよくご覧ください。
関連の法律を見てもなお、表示に問題がある場合にはお近くの消費者センター、消費者庁あるいは農水省など関連施設に連絡しましょう。
続き→生鮮食品の原産地表示もう少しだけ詳しく説明してみる(azure blue)
タケルンバ卿の生食にはリスクがありますよーの記事、個人の宣言としては潔いね、と思う一方、薬味の記述(リスク論で気に入らないところはブコメに書いたので省略)はいまいち納得できなかったのでぐだぐだ探してたら似たようなことを考えている人がいました。コメントを書こうと思ったのですが、初めましてでこのような長文を投下する勇気がなかったので少しアレンジしてトラバを送ることにしました。
わさびの抽出物(イソチオシアネートを主成分とする)は抗菌作用をもつとして食品添加物として認可されています(整理番号200:セイヨウワサビ抽出物、419:ワサビ抽出物)
しかし、本来のわさびの状態でどの程度の抗菌作用を持つか、の研究結果はあまり見つかりません。
ご存知の方はぜひ教えてください。
私が調べた範囲でわかったことを以下に簡単に書いておきます。
わさびの殺菌作用について、たとえば東京都がわさびの抗菌作用の実験をしていますが、繁殖してしまったO157やサルモネラに対しては殺菌作用は期待できないとの報告があります。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/rensai/files/jikken08.pdf
以下の実験でも、すりおろしたわさびの効果は期待できないとされています。
http://www.takasaki.ed.jp/ssh/research/report/h18report-research-4.pdf
有効成分のイソチオシアネートは揮発性成分であり、密閉状態でなければ長時間留まって作用することは難しいからですね。
タケルンバ卿の提示している論文
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006992810
ですが、シャーレ逆さまにしてわさびを蓋側に置いて蒸散条件(密閉して最大48時間)行っています。
論文を読むとわかるのですが、生食用牛肉の取り扱い条件である4℃(正確には10℃以下)の曝露条件において48時間曝露しても菌の増殖を抑制できていません。これはおそらく、4℃ではアリルイソチオシアネートがあまり揮発しなかったこと、曝露中の大腸菌がほとんど増殖しなかった(ために静菌状態であり、わさびが取り除かれたあとに正常に増殖した)ことなどが理由として考えられます。
また、抗菌作用が見られた黄色ブドウ球菌でも35℃の条件で5時間までは菌数が減少していません。生食用のものを真夏の気温の中、5時間放置しておくのがどれほど恐ろしいことかわかるでしょうか?
つまり、生食用の薬味の効果を担保できるような論文ではないのです。論文でもそんなことは一行も書いてません(導入としてはそういう経緯があったんだろうねーとは書いてますが)。
論文自体は普通だと思うのですが、今回必要な条件からかけ離れているので素直に「わさびをつけておけばリスクを減らせるね!」とはちっとも思えないのです。
あと、気になっているのが菌種ですね。
東京都の実験はO157ですが、他の二つは非病原性の大腸菌です。
まあ、アリルイソチオシアネートは殺菌スペクトルが広いそうなので、結果をそのまま挿入してもよいのかもしれません。
さて、わさびには抗菌作用はあるんだと思います。
実際に抽出物が食品添加物として認められていますしね。
しかし、私としては生食のお供にわさびやしょうがなどの薬味をつけたからといって安全だとは思えません。安心できるかもしれませんが。おまじない程度に考えておいた方がいいでしょう。
ブコメでも薬味を過大評価している方が散見されたのでつい書いちゃいましたが、薬味は美味しくいただくためのお供として利用しましょう。
わさびの抽出物(イソチオシアネートを主成分とする)は抗菌作用をもつとして食品添加物として認可されています(整理番号200:セイヨウワサビ抽出物、419:ワサビ抽出物)
しかし、本来のわさびの状態でどの程度の抗菌作用を持つか、の研究結果はあまり見つかりません。
ご存知の方はぜひ教えてください。
私が調べた範囲でわかったことを以下に簡単に書いておきます。
わさびの殺菌作用について、たとえば東京都がわさびの抗菌作用の実験をしていますが、繁殖してしまったO157やサルモネラに対しては殺菌作用は期待できないとの報告があります。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/rensai/files/jikken08.pdf
以下の実験でも、すりおろしたわさびの効果は期待できないとされています。
http://www.takasaki.ed.jp/ssh/research/report/h18report-research-4.pdf
有効成分のイソチオシアネートは揮発性成分であり、密閉状態でなければ長時間留まって作用することは難しいからですね。
タケルンバ卿の提示している論文
http://ci.nii.ac.jp/naid/110006992810
ですが、シャーレ逆さまにしてわさびを蓋側に置いて蒸散条件(密閉して最大48時間)行っています。
論文を読むとわかるのですが、生食用牛肉の取り扱い条件である4℃(正確には10℃以下)の曝露条件において48時間曝露しても菌の増殖を抑制できていません。これはおそらく、4℃ではアリルイソチオシアネートがあまり揮発しなかったこと、曝露中の大腸菌がほとんど増殖しなかった(ために静菌状態であり、わさびが取り除かれたあとに正常に増殖した)ことなどが理由として考えられます。
また、抗菌作用が見られた黄色ブドウ球菌でも35℃の条件で5時間までは菌数が減少していません。生食用のものを真夏の気温の中、5時間放置しておくのがどれほど恐ろしいことかわかるでしょうか?
つまり、生食用の薬味の効果を担保できるような論文ではないのです。論文でもそんなことは一行も書いてません(導入としてはそういう経緯があったんだろうねーとは書いてますが)。
論文自体は普通だと思うのですが、今回必要な条件からかけ離れているので素直に「わさびをつけておけばリスクを減らせるね!」とはちっとも思えないのです。
あと、気になっているのが菌種ですね。
東京都の実験はO157ですが、他の二つは非病原性の大腸菌です。
まあ、アリルイソチオシアネートは殺菌スペクトルが広いそうなので、結果をそのまま挿入してもよいのかもしれません。
さて、わさびには抗菌作用はあるんだと思います。
実際に抽出物が食品添加物として認められていますしね。
しかし、私としては生食のお供にわさびやしょうがなどの薬味をつけたからといって安全だとは思えません。安心できるかもしれませんが。おまじない程度に考えておいた方がいいでしょう。
ブコメでも薬味を過大評価している方が散見されたのでつい書いちゃいましたが、薬味は美味しくいただくためのお供として利用しましょう。
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