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日常に潜む疑似科学的なことをメインに食指の動く方にのらりくらりと書いていく雑記です。
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NYのレストランで「塩使用禁止法案」が提出されたらしいよーって話を痛いニュースで見て、そんな馬鹿な・・・と思ってソースを辿って行ったんですが、訳が間違ってるわけじゃなさそうです。
ただ、その過程でとても面白いものを見つけたので紹介したいと思います。


NYで「レストランで塩使用禁止法案」提出…高血圧など生活習慣病の抑制に(痛いニュース(ノ∀`))

NYのレストランで「塩使用禁止法案」提出(サーチナ)

NYのレストランで「塩使用禁止法案」提出(ロケットニュース24)

NY restaurants face total salt ban if politician gets his way(Telegraph)


残念ながらTelegraph(イギリスのメディア)でソースが完全に途切れたので、記者の勘違い?と思ったのですが、Felix Ortiz議員のWikipedia(英語)を見たらすでにそのことが書いてあり、アメリカのニュースソースを見つけることができました。

関連ニュース
Brooklyn Dem Felix Ortiz wants to ban use of salt in New York restaurants(NYDailyNews)
Assemblyman seeking to ban all salt in restaurant cooking(TimesUnion)


これはアメリカでも相当話題になったようで、いくつかのメディアが取り上げています。
その反応の多くはねーよwww というものです。
痛いニュースでは「アメリカおかしいんじゃねーのw」という反応が多数を占めていましたが、おかしいのはOrtiz氏だけで、アメリカでもだいたい同じ反応のようです。


さて、Wikipediaを読んでいて不思議に思った点が一つあります。
Telegraphおよび日本の記事ではBloomberg市長も支持している、とありますが、Wikipediaの記事には

New York City mayor Michael Bloomberg, who called the bill "ridiculous"

つまり、

NY市のマイケル・ブルームバーグ市長はこの法案について「おかしい」と言っている

と書いてあります。
そのソースがこちらで、精訳していないですが簡単に要約してみると、

Ortiz氏の言うこと(塩分過剰摂取のリスク)はもっともだが度が過ぎている。そもそも、私たちはまさに減塩に取り組んでいるところだ

というのです。
良かった。市長がまともで良かった!

そうなのです。
NY市では現在、ファストフードを含めたレストラン、加工食品などの減塩政策に取り組んでいるのです。
2009年から始まっていて、アメリカのメディアで取り上げられたのが2010年1月ごろです。

関連ニュース
New city plan pushes for 25% reduction of salt in nearly all food products(NYDailyNews)
Next on New York's health agenda: curbing salt intake(TIME)

アメリカでの塩分摂取量の約75%が加工食品や調理済み食品に由来しているという報告があります(参考:
疫学批評
そうすると、家庭内でどんなに塩分摂取を控えたところでたかが知れていますよね。
そこでNY市では「個人で減塩に努めなさい」と言うのではなく、食品製造業者に食品中の塩分量を減らしなさいということにしました。


さて、実際の取り組みを見てみましょう。
NY市保健精神衛生局(DOHMH:Department of Health and Mental Hygiene)は
2014年までの5年間に加工食品の塩分量を20%削減する、という方針を打ち立てました。(ニュースでは25%とありますが、こちらのページでは20%となっています)
報告当時(2009年)の加工食品中のナトリウム量を調べ、そこから2012年に約10%減らし、2014年に約20%減らしたときの目標値がそれぞれ記されています。
Restaurant Food Targets (PDF)

目標値がちょっときついかな?とも思うのですが、このような積極的な取り組みをしているのはNYだけではありません。
イギリスでは国を挙げて減塩に取り組んでいました。その結果、4年かけて塩分摂取量を10%減らすことに成功しています。イギリスでも成功してるからうちでもできるはずだ、ということですね。


このような、製造業や外食産業を巻き込んだ大きくて重要な政策について市長が知らないとなると「ええ!?」って思いますよね。
ちなみに、Bloomberg氏の発言を見つけたのは最後だったので、それまでずーっと「ええ!?」って思ってました。


さて、NYでは製造業に圧力をかけても減塩を促進したいのですが、実はそんなアメリカ人よりも日本人の塩分摂取量は多いのです。
アメリカ人男性の一日の塩分摂取量が10g程度であるのに対して、日本人男性は12g前後摂取しています。
日本には漬物がありますし、味噌も醤油もいわば塩です(塩分濃度はそれぞれ10%、15%程度)。
そんな日本人は食塩を過剰摂取しやすく、また塩分の過剰摂取による疾病のリスクが他の国と比べて高いです。

たとえば胃がん、胃潰瘍、高血圧などの疾病の他に、
高血圧からくる心疾患、動脈硬化、脳卒中、腎臓疾患などのリスクも高くなります。


それでも、日本でもまったくなんの努力がされていないわけじゃありませんよ。
一日の塩分摂取量を10g未満(女性では8g未満)が望ましいとされていますが、ここ10年で1g、30年前と比較しても2g減らすことに成功しています(
参考1参考2:Garbagenewsより)
ただしWHOでは一日5g以下が望ましいとしています
なので、実はあと半分減らしたいわけですね。

日本では家庭内での塩分摂取量が25%ということはないでしょう。たぶんもっと大きな割合を占めていると思います。だから、右に倣えが必ずしも正しいとは言えません。
でも、もしかしたらこのような大胆な政策が参考になる地域があるかもしれません。たとえば東京とか。



Ortiz氏の提出した法案は極端でしたが、塩分の過剰摂取のリスクについてはまったく正しいことを言っています。そして、塩分過剰摂取のリスクを正しく理解したうえでNYは減塩政策を実行しています。
NY市のこの取り組みは、塩分摂取量の約75%が加工品や外食であるNYの特徴をよくとらえており、成功すれば効果が期待できそうです


悪いところは反面教師として受け取り、良いところは積極的に真似するのが賢い方法ですね。
アメリカm9(^Д^)プギャーしてる間に周りはどんどん先へ行ってしまいます。
NY市の取り組みから学ぶことは多いはず。私たちも減塩についてもうちょっと考えてみたいですね。



なんだか賢い日本人の方が随分と多いようだったので、ちょっとムキになって書いてみました。



ところで、日本での取り組みをほとんど知らないので補足してくれる方がいらっしゃるとありがたいです。



追記
日本にだってお馬鹿なことをつい口走っちゃうお馬鹿な議員さんは結構いますよね。
そんな感じ。
法律を守らない市長だったり、自由奔放な知事だったり、極端に思想の偏った議員だったり、自治体主催の食品添加物の講演会で安部司氏を呼んじゃったり。あるよねー。

あと、加工食品というのは自宅で食べるシリアルとか食パンとかマーガリンとか梅干しとかいろいろ含むのではないかと思います。あれ。そうすると日本でも結構加工食品が多いのかしら。
そのへんの調査がないか探してみると面白そうですね。調べてみようと思います。

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コロンブスの卵
全米科学アカデミー医学部会、加工食品中の食塩含有量の規制を提唱。(http://blog.livedoor.jp/ytsubono/archives/51821615.html)
1958年以前に食経験があるということで「一般に安全とみなされる物質(GRAS)」として認めてきた食塩のステータスを「添加物」に変更すれば使用基準で加工食品中の量を縛れるというものでおもしろいです。
5年ぐらい前にCSPIがFDAに要請を出していたのとほぼ同じ内容で、くだらないこともいっぱいやるけどこういう発想が出るところが、今の日本の消費者運動と一味違うところかなって。(宇井純先生なら考えたかもしれませんけど)
Gloria 2010/07/03(Sat)12:46:35 編集
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