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「スーパーや小売店に産地表示をするなという指示が農水省から出ている」
という話(情報元はここかしら?)をTwitter経由で知ったのですが、実際の文書(PDF)を読んでみますとそれが間違いであることがわかりました。
もう収束段階にあるかと思うのですが、このブログでは一応食品関係を扱っていますので、記録としてエントリにしておきます。
まず始めに結論を書きます。
・この通達は4月5日に行われたものであり、4月7日には一部でニュースとして取り上げられています。
・5月20日の正午頃には農水省に確認された方がいます。
以上です。
というか、私にはこれ以外の含意は拾えません。
なぜそう読めるのか不思議なくらい。
でも、なぜありもしない意図を読み取ってしまったのか、少しわかった気がするので解説します。
まず、元の文書を読んでみます。
簡単に要約しますと以下のようになります。
みなさんの中には、4月以降、野菜を買うときに産地表記に「茨城県産」だけでなく「茨城県〇〇市産」が増えたと感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
4月4日から、出荷制限を県単位ではなく市町村やブロック分けした地域で小分けにしたため、小売店での表示もそれに対応して市町村やブロック分けした地域での表示になりました。そのお願いが先ほどの農水省の通達なのですね。
放射性物質が観測されて以降、国が県単位での出荷制限を行ったため、暫定基準値として問題ない地域の農産物も出荷制限され、風評被害につながりかねないと言われたことは記憶に新しいですね。
このとき、県単位の制限ではなく、さらに区分けした制限を行ったことに対して不満は出なかったように感じているのですが、みなさん、どうだったでしょう?
なぜ今になって噴き上がるのか、私には理解できません。
さて、それではどうしてみなさんが間違えたかというと、省略された前提を踏まえていなかったからです。もっと意地悪くいうならば「国がやることは全部ダメだ」という先入観があるからでしょうか。
野菜(生鮮食品)の産地表示はJAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)に基づいてJAS規格が定められています。
その中に「生鮮食品品質表示基準」(PDF)という規格がありますが、これの農産物の項目を見てください。
第3条では、表示すべき事項として「名称」と「原産地」を挙げています。
では「原産地」とは具体的にどういうものかと言いますと、第4条に野菜(農産物)について書かれています。
野菜は基本的には県単位の表示をしなければならないと決められているのですね。
これは第3条からもわかる通り、義務表示です。
では、記載を省略できる場合とは具体的にどういう場合かというと、たとえば長野県ではきのこ類は「信州産」として売られています。このように一般的に知られている地名を用いる場合、「長野県産」の都道府県表示を省略できます。
他にも、たとえば「カリフォルニア産」のオレンジがあった場合、原産国の「アメリカ産」を省略できます。
つまり、より詳細に記述することで大きなくくりを省略できますよ、ということです。
ここまで書けばわかってもらえると思うのですが、県単位よりも大きなくくりの「国産」にすることはできません。
結論として、農水省から食品小売業界に出された通達であるために、
という前提を消費者が知らなかったということです。
この前提を知っていたのに誤読したのならば、やはり国語をやり直すかあなたのバイアスに自覚的になるべきだと思います。
JAS規格を読んでもわかる通り、国産品は市町村名を書くことが認められています。また、それが一般的に知られている地名であれば都道府県名を省略できます。
しかし、ここからが小売店の事情になるのですが、同じ日でも午前と午後で違う産地の野菜が届くことがありますし、市町村単位だったらなおさらです。つまり、ラベル貼りとか売り場の表示が大変なのですね。
ですから、小売店には大変な仕事かもしれないけれど、消費者の知る権利や生産者への風当たりを小さくするために小売店も市町村単位の産地表示に協力してもらえると助かる、という通達なのです。
しかし、こういう前提を知らない人からしたら「御配慮をお願いいたします」が違う意味に見えたのかもしれませんね。
ですが、これは農水省から小売店への通達ですし、消費者に見えていない前提条件を両者が共有しているわけですから問題のない通達に思えます。そして、私はそのどちらでもありませんが、生鮮食品の原産地表示について知っているので、通達を素直に読むことができました。
法律の範囲内で通達の内容を解釈するならば「市町村単位での記載をお願いしたい」という意味にしか取れません。というか、この通達の内容が「市町村単位での記載をお願いしたい」であることをみなさんはスーパーなどで見ていらっしゃいますよね?ご存じない方はスーパーに行って野菜の産地表示を見てください。
最後に、当たり前のことで大変恐縮なのですが、
「そんなことやるなんてバカじゃないの?」
と私たちが思うことは、お役人さんだって「バカじゃないの?」って思います。
だって彼らは一応プロなのですから。
なので、まず憤る前に「そんなこと」が行われたのかを確認してください。
また、消費者庁の介入によりJAS法違反(常習性がなくて過失による一時的なもの)の指導も強化されています(PDF)ので、産地表示をJASの規格に沿わない形に変更した場合は店頭で謝罪文の掲載やHPでの通知を行う必要が出てきます。
おまけ
調べてて思ったのですが、消費者庁の出したこの通達と混同された方もいらしたのかな?とも感じました。
東日本大震災を受けた食品表示の運用について(消費者庁)
この通達は被災地域において、食品表示を行うことが食品流通の妨げになる場合、問題が生じない軽微な違いあるいは誤解を招かない場合に限り、記載と違っても取り締まりを行わないので円滑な流通を優先させること、という通達です。(悪質な場合はもちろん罰せられます)
東京周辺も確かに被災地ですが、食品の流通は特に問題になっていませんのでこの通達の地域には含まれないでしょう(小売店で何不自由なく購入できる時点で流通に問題がないことは明らかでしょう)。
あと、畜産物と農産物、加工品では原産地の記載のルールが違いますので、こちらをよくご覧ください。
関連の法律を見てもなお、表示に問題がある場合にはお近くの消費者センター、消費者庁あるいは農水省など関連施設に連絡しましょう。
続き→生鮮食品の原産地表示もう少しだけ詳しく説明してみる(azure blue)
という話(情報元はここかしら?)をTwitter経由で知ったのですが、実際の文書(PDF)を読んでみますとそれが間違いであることがわかりました。
もう収束段階にあるかと思うのですが、このブログでは一応食品関係を扱っていますので、記録としてエントリにしておきます。
まず始めに結論を書きます。
・この通達は4月5日に行われたものであり、4月7日には一部でニュースとして取り上げられています。
・5月20日の正午頃には農水省に確認された方がいます。
農水省食料局流通課に電話で確認しました。ここでいう「産地名の掲示等についての配慮」とは、「市町村単位でできるだけ表示して欲しい。消費者からの質問にも答えられるようにして欲しい」という意味だそうです。良かった。 http://bit.ly/kuqenZ
というか、私にはこれ以外の含意は拾えません。
なぜそう読めるのか不思議なくらい。
でも、なぜありもしない意図を読み取ってしまったのか、少しわかった気がするので解説します。
まず、元の文書を読んでみます。
簡単に要約しますと以下のようになります。
・放射性物質による汚染により県単位での出荷制限をしてきたが、4月4日にこの区分けを細かく市町村あるいは地域単位で行うことにした。 ・農水省は放射性物質の検査結果やそれに基づく出荷制限情報を出しているが、それも市町村単位等で行う。 ・消費者が「検査結果を知ることができるように」野菜等の販売時において産地名も検査の区分けにならうようにお願いしたい。 |
みなさんの中には、4月以降、野菜を買うときに産地表記に「茨城県産」だけでなく「茨城県〇〇市産」が増えたと感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
4月4日から、出荷制限を県単位ではなく市町村やブロック分けした地域で小分けにしたため、小売店での表示もそれに対応して市町村やブロック分けした地域での表示になりました。そのお願いが先ほどの農水省の通達なのですね。
放射性物質が観測されて以降、国が県単位での出荷制限を行ったため、暫定基準値として問題ない地域の農産物も出荷制限され、風評被害につながりかねないと言われたことは記憶に新しいですね。
このとき、県単位の制限ではなく、さらに区分けした制限を行ったことに対して不満は出なかったように感じているのですが、みなさん、どうだったでしょう?
なぜ今になって噴き上がるのか、私には理解できません。
さて、それではどうしてみなさんが間違えたかというと、省略された前提を踏まえていなかったからです。もっと意地悪くいうならば「国がやることは全部ダメだ」という先入観があるからでしょうか。
野菜(生鮮食品)の産地表示はJAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)に基づいてJAS規格が定められています。
その中に「生鮮食品品質表示基準」(PDF)という規格がありますが、これの農産物の項目を見てください。
第3条では、表示すべき事項として「名称」と「原産地」を挙げています。
では「原産地」とは具体的にどういうものかと言いますと、第4条に野菜(農産物)について書かれています。
ア 農産物 国産品にあっては都道府県名を、輸入品にあっては原産国名を記載すること。ただし、国産品にあっては市町村名その他一般に知られている地名を、輸入品にあっては一般に知られている地名を原産地として記載することができる。この場合においては、都道府県名又は原産国名の記載を省略することができる。 |
野菜は基本的には県単位の表示をしなければならないと決められているのですね。
これは第3条からもわかる通り、義務表示です。
では、記載を省略できる場合とは具体的にどういう場合かというと、たとえば長野県ではきのこ類は「信州産」として売られています。このように一般的に知られている地名を用いる場合、「長野県産」の都道府県表示を省略できます。
他にも、たとえば「カリフォルニア産」のオレンジがあった場合、原産国の「アメリカ産」を省略できます。
つまり、より詳細に記述することで大きなくくりを省略できますよ、ということです。
ここまで書けばわかってもらえると思うのですが、県単位よりも大きなくくりの「国産」にすることはできません。
結論として、農水省から食品小売業界に出された通達であるために、
・生鮮食品には産地名を表記しなければならない ・国産野菜は都道府県名を記載すること |
という前提を消費者が知らなかったということです。
この前提を知っていたのに誤読したのならば、やはり国語をやり直すかあなたのバイアスに自覚的になるべきだと思います。
JAS規格を読んでもわかる通り、国産品は市町村名を書くことが認められています。また、それが一般的に知られている地名であれば都道府県名を省略できます。
しかし、ここからが小売店の事情になるのですが、同じ日でも午前と午後で違う産地の野菜が届くことがありますし、市町村単位だったらなおさらです。つまり、ラベル貼りとか売り場の表示が大変なのですね。
ですから、小売店には大変な仕事かもしれないけれど、消費者の知る権利や生産者への風当たりを小さくするために小売店も市町村単位の産地表示に協力してもらえると助かる、という通達なのです。
しかし、こういう前提を知らない人からしたら「御配慮をお願いいたします」が違う意味に見えたのかもしれませんね。
ですが、これは農水省から小売店への通達ですし、消費者に見えていない前提条件を両者が共有しているわけですから問題のない通達に思えます。そして、私はそのどちらでもありませんが、生鮮食品の原産地表示について知っているので、通達を素直に読むことができました。
法律の範囲内で通達の内容を解釈するならば「市町村単位での記載をお願いしたい」という意味にしか取れません。というか、この通達の内容が「市町村単位での記載をお願いしたい」であることをみなさんはスーパーなどで見ていらっしゃいますよね?ご存じない方はスーパーに行って野菜の産地表示を見てください。
最後に、当たり前のことで大変恐縮なのですが、
「そんなことやるなんてバカじゃないの?」
と私たちが思うことは、お役人さんだって「バカじゃないの?」って思います。
だって彼らは一応プロなのですから。
なので、まず憤る前に「そんなこと」が行われたのかを確認してください。
また、消費者庁の介入によりJAS法違反(常習性がなくて過失による一時的なもの)の指導も強化されています(PDF)ので、産地表示をJASの規格に沿わない形に変更した場合は店頭で謝罪文の掲載やHPでの通知を行う必要が出てきます。
おまけ
調べてて思ったのですが、消費者庁の出したこの通達と混同された方もいらしたのかな?とも感じました。
東日本大震災を受けた食品表示の運用について(消費者庁)
この通達は被災地域において、食品表示を行うことが食品流通の妨げになる場合、問題が生じない軽微な違いあるいは誤解を招かない場合に限り、記載と違っても取り締まりを行わないので円滑な流通を優先させること、という通達です。(悪質な場合はもちろん罰せられます)
東京周辺も確かに被災地ですが、食品の流通は特に問題になっていませんのでこの通達の地域には含まれないでしょう(小売店で何不自由なく購入できる時点で流通に問題がないことは明らかでしょう)。
あと、畜産物と農産物、加工品では原産地の記載のルールが違いますので、こちらをよくご覧ください。
関連の法律を見てもなお、表示に問題がある場合にはお近くの消費者センター、消費者庁あるいは農水省など関連施設に連絡しましょう。
続き→生鮮食品の原産地表示もう少しだけ詳しく説明してみる(azure blue)
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無題
>>こういう前提を知らない人からしたら「御配慮をお願いいたします」が違う意味に見えたのかもしれませんね。
ちがう。 毎度毎度合理的でない理想とは逆の対応をする政府と言う前提を知っているから「御配慮をお願いいたします」と言うあやふやな表現に不安を持つ。
読む側の責任にするのは後だ、書き方の曖昧さを指摘するほうが先。 おk?
ちがう。 毎度毎度合理的でない理想とは逆の対応をする政府と言う前提を知っているから「御配慮をお願いいたします」と言うあやふやな表現に不安を持つ。
読む側の責任にするのは後だ、書き方の曖昧さを指摘するほうが先。 おk?
名無しさんへ
このエントリでは、通達はプロ(農水省)からプロ(小売業者)へ出されたものであり、プロが踏まえているべき前提を加味して読むのならば「あやふや」でも「曖昧」でもない、という説明をしております。
・素人の消費者向けに「別途に」説明をすべきか?
・プロ向けであっても易しく書くべきか?
等の議論はございますが、現時点でそのような「配慮」は必要ない、と私は考えております。
なぜなら、そちらに費やすリソースをもっと必要な部分に費やしてほしいと考えているからです。
どうしても必要ならばそれはメディアが行うべきでしょう。
>毎度毎度合理的でない理想とは逆の対応をする政府と言う前提
失礼ですが、これはあなただけに通じる前提ではないでしょうか?少なくとも私はそのような前提を共有しておりませんし、仮にそのような疑いを抱いたとしてもしっかりと調べてから批判したいと考えております。
今回の件も、しっかりとした根拠をベースに批判が行われたのなら何も言いませんが、みなさんが確認もせずに憤っていらしたので僭越ながらエントリにさせていただきました。
思い込みだけで行動せずにしっかりと調べて確かな批判をしたいですね。
・素人の消費者向けに「別途に」説明をすべきか?
・プロ向けであっても易しく書くべきか?
等の議論はございますが、現時点でそのような「配慮」は必要ない、と私は考えております。
なぜなら、そちらに費やすリソースをもっと必要な部分に費やしてほしいと考えているからです。
どうしても必要ならばそれはメディアが行うべきでしょう。
>毎度毎度合理的でない理想とは逆の対応をする政府と言う前提
失礼ですが、これはあなただけに通じる前提ではないでしょうか?少なくとも私はそのような前提を共有しておりませんし、仮にそのような疑いを抱いたとしてもしっかりと調べてから批判したいと考えております。
今回の件も、しっかりとした根拠をベースに批判が行われたのなら何も言いませんが、みなさんが確認もせずに憤っていらしたので僭越ながらエントリにさせていただきました。
思い込みだけで行動せずにしっかりと調べて確かな批判をしたいですね。
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