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日常に潜む疑似科学的なことをメインに食指の動く方にのらりくらりと書いていく雑記です。
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前置きが随分と長くなったので分けました。
本エントリを読んでよく理解できなくなった場合は戻って読んでみてね。
エコナに含まれるグリシドール脂肪酸エステルのその後についてちょっと解説するよ(前置き編)
※食品安全委員会の資料を読んでいるだけなのでそこに書いていないことは私もわかりません。早く議事録が読みたいです。


読み進める前に、花王が出しているQ&Aを紹介しておきます。
今回の結果についても簡潔にまとまっていますのでどうぞ。こんなブログを(ry
エコナに関するQ&A(花王株式会社)


前置き編のおさらい。
花王はグリシドール脂肪酸エステル(GE)に関して食品安全委員会から、

1.グリシドール脂肪酸エステル及びグリシドールの毒性に関する情報収集
2.グリシドール脂肪酸エステルを経口摂取した場合の体内動態試験
3.グリシドール脂肪酸エステル及びグリシドールの遺伝毒性試験

について報告してね、と言われていたのでした。
1については報告済みで、2と3の試験の結果からGEからグリシドールできてるよ!ということがわかり、
メディアで取り上げられたのでしたね。

以上おさらい終わり。


それではまず、2010年6月の報告を見てみましょう。
ここでは2の方法の開発と3の試験結果が報告されています。

・食用油脂中のGE含量の測定
食用油脂中のGEの分析法を開発し、実際に測定した結果が報告されています。
DAGを主成分とする油(エコナ)以外のほとんどの食用油では定量下限限界以下しかGEを含有していません。一方、DAG油には他の食用油の約100~1000倍ほどのGEが含まれています。
DAGに含まれるGEは多い順に、グリシドールリノール酸エステル、グリシドールオレイン酸エステル、グリシドールパルミチン酸エステルとなっています。この中でグリシドールオレイン酸エステルに関してはIARCの発がん性リスク評価においてGroup3(ヒトに対する発がん性が分類できない)に分類されています。
以降の試験で用いられているGEはグリシドールリノール酸エステル(GEL)です。

・体内動態研究のための分析方法の開発
GEの体内動態試験のために、血漿中のGEおよびグリシドールの高感度分析法の開発を行っています。GEはLC/MS法により定量限界5 ppb=0.005 μg/mL、グリシドールはGC/MS法により定量限界0.2ppm=0.2 μg/mLで分析できます。グリシドールは揮発性が高く、低分子量であり不安定なことから高感度の分析方法の開発が難しいようです。
8月の報告ではこの分析法を用いた試験が行われています。

・GELおよびグリシドールの遺伝毒性試験
グリシドールは動物実験で発がん性が確認されている物質で、遺伝毒性があることが知られています(発がん性物質の中には遺伝毒性のないものもあります→参考)
遺伝毒性試験としてAmes試験、染色体異常試験、小核試験が行われています。
それぞれの試験の違いは
花王のサイトを見てください。
遺伝毒性のあるグリシドールではAmes試験、染色体異常試験で陽性でした。
GELではAmes試験で陽性、染色体異常試験で陰性でした。
小核試験においてはグリシドール、GELともに陰性でした。
ここまでが
GLP基準に適合した試験受託機関における遺伝毒性試験です。この試験については国立医薬品食品衛生研究所の研究者を中心とした専門家により信頼性および中立性が確保されていると報告されています。
次に、Ames試験では陽性が出ていましたのでGELからグリシドールが生成されている可能性が考えられました。そこでGELにリパーゼ阻害剤(リパーゼの作用によりGEがグリシドールとリノール酸に加水分解されます)を加えてみたところ、復帰変異個体の増加が抑えられたそうです。
ここまでが花王の自主研究です。

以上の試験結果から、GELのAmes試験での陽性結果は、GELからグリシドールが生成したことによるものである可能性が示唆された、と結論付けています。

以上が6月の報告です。
詳しい資料は
食品安全委員会(第334回会合)議事次第からどうぞ。
資料1および議事録を参考にしました。




次に、今回の報道のきっかけになった2010年8月の報告を見てみましょう。
ここでは主に「2.グリシドール脂肪酸エステルを経口摂取した場合の体内動態試験」に関する試験結果が報告されています。

・GEを経口摂取した場合の血中移行性試験
ニュースで報道された試験ですね。
エコナに不純物として含まれるGEの約4600倍(4571倍:体重50kgの人が1日に10gのエコナ油を使ったと仮定して算出)である75 mg/kgのグリシドールおよびそれと等モルの341 mg/kgのGELを経口投与しています。投与後5、15、30分および1、2、4,8、24時間後の血漿中のGELおよびグリシドール濃度を測定しました。
すべての時間において血漿中のGELの濃度は定量限界(0.005 μg/mL)以下でした。つまり、GELのままでは吸収されないか、されてもごく微量であるということが言えそうです。
次に血漿中のグリシドール濃度です。GELでは投与30分後に、グリシドールでは投与15分後の最大値になり、そののちは速やかに減少しているようすが表およびグラフから読み取れます。


GEL6-1table.jpgGEL6-2Figure.jpg





以上のことから、この試験において、経口投与されたGELはグリシドールに変換され、血漿中ではグリシドールとして存在することが明らかになった、と結論付けています。


さて、少し解説します。
この試験ではエコナに含まれる量の約4600倍のGELとグリシドールを投与しています。この量に根拠がないわけではないのですが、あまりにも多すぎて「花王やけになりすぎ」なんて声もちらほら聞こえてましたね(主に
はてなブックマークで)。
花王は約4600倍、つまり75 mg/kgのグリシドール投与に対して「NTP(National toxicology program:米国保健社会福祉省の国家毒性プログラム)によるラット発がん性試験の最高用量である」としています。
NTPではラットに2年間の発がん性試験を行っています(簡単に知りたい方は
こちら、その他の発がん性試験も含めた評価はこちら【PDF注意】)が、そのときのグリシドール投与量が37.5 mg/kgと75 mg/kgでした。その高い値の方、ということですね。
信頼性の高い結果がすでにあるのでそれに合わせた量を投与することで比較も可能ですね。
また、グリシドールの性質上の問題として高感度の分析ができません。
たとえば投与するGELおよびグリシドールの量をエコナ含有量の170倍程度(GEL:12.7 mg/kg、G:2.8mg/kg)にしたらどうなるでしょう?実は投与後の最大値のピークが定量できません。検出はできると思いますが、その場合、この試験の意味はあるでしょうか?
この試験で知りたいのは「GELを経口摂取した場合の体内動態」です。
もちろん最終的には花王はエコナの安全性を保証したいのです。ですが、もっと小さな用量で定量限界以下だから問題ない、なんて花王が言ったら逆にぶっ飛ばします。
この試験において「定量できない」「検出できない」ということは「GEの影響がわからない」と同義なのです。
それでは何の意味もありませんね。
この試験で確認したいのは「GEを経口摂取した場合の体内動態」であり、その方法として血漿中のGEおよびグリシドール濃度を測って一つの指標としているわけです。
この試験を行う前にAmes試験においてGELがグリシドールに変換されること、それはおそらくリパーゼの作用によるものであろう、ということがわかっていました。
ですので、今回の試験は「発がん物質に変わるかどうかを見るための試験」ではありません。
それはもうとっくに確認済みなのです。
【追記】少し大雑把に言いすぎました。「GELがグリシドールに変換されること」について、Ames試験はin vitroの試験、ラットへの経口投与試験はin vivoの試験でした。
in vitroin vivoで異なる結果が出ることは少なくありません。そういう意味で「GEを経口投与したら体内でグリシドールに変換した」という結果は意味のあるものです。
ただし、変換されることを確認するためには高用量での試験は不可欠でした。
【追記終わり】


さて、解説を含めて少し長くなりましたがここまでよろしいでしょうか。
次いきます。


・ラットとカニクイザルを用いた血中移行性および種間差の検討

上記の試験において、
「血漿中ではグリシドールとして存在する」
「投与後30分あるいは15分後に血中濃度がピークになる」
ことが確認されましたので、今度はもう少し低い用量で試験を行っています。
ラットではエコナの普通使用量(一日10g)である1倍量および5、25、125倍量のGELおよび等モルのグリシドールを投与し、カニクイザルでは100倍量および300倍量のGELおよび等モルのグリシドールを投与して、投与後15分および30分後の血漿中のグリシドール濃度を測定しています。
ラットにおいてはGEL投与群がやや低い値を示すものの、GELあるいはグリシドール投与において血漿中濃度に大きな差は見られません。ところが、カニクイザルでは300倍用量を投与した際にGELとグリシドール投与では大きな差が見られました。グリシドールを投与した場合は血漿中にグリシドールが15分後に0.14 μg/mL、30分後では0.16 μg/mLが検出されていますが、GELを投与した場合には血漿中のグリシドール濃度は定量下限(50 ng/mL)以下でした。


GEL8-3table-and-figure.jpg










以上の試験結果から、カニクイザルにおけるグリシドールの血中移行性は、ラットの血中移行性と異なる可能性が示唆された、と結論付けています。

花王は、ラットとカニクイザルの種間差に関して舌リパーゼの活性の違いが血漿中のグリシドール濃度に影響しているのではないか、としています。


ラット、マウス等のげっ歯類は舌漿液腺から口腔内に舌リパーゼを分泌することが知られています。ウサギ、ブタ、ヒヒ、ヒトなどの動物種ではその酵素活性はほとんど認められず、げっ歯類では高いことが報告されています。(略)ラットとカニクイザルを用いた血中移行性に関する試験において、GELを投与したラットに急速な血漿中グリシドール濃度の上昇が認められ、サルには認められなかったことについては。脂質消化に関与する舌リパーゼの寄与が影響した可能性があると推察しました。すなわち、ラットでは舌リパーゼが異で活性を持ち、そのため、GELは胃内への投与後速やかに脂肪酸が遊離してグリシドールに変換し、直ちに吸収されて、その結果、グリシドールを直接胃内に投与した場合と同じような投与初期の血漿中グリシドール濃度の急速な上昇が認められたものと考えられました。一方、サルにおいては、胃内での舌リパーゼの活性が低く、GELからグリシドールに変換されにくかった結果として、血漿中にグリシドールは認められなかったものと考察しました。

この試験はリパーゼ阻害剤を用いたAmes試験同様に花王の自主研究ですので、信頼性および中立性の確認を受けたものではありません。


さて、必要ないかもしれませんが少し解説します。
まず、定量下限が異なっていることに関して。種間差の試験では花王が開発検討していた高感度分析法の一つATD-GC-MS法が導入されていますので、最初の約4600倍投与した試験とグリシドールの定量下限よりも高感度の定量ができているそうです。
試験の結果を受けて食品安全委員会でどのような議論が行われたかはわかりません。
しかし、実際にラットとサルではGELから生成されたグリシドールの吸収量に種間差があるというのは大きなポイントだと思われます。ヒトではおそらくカニクイザルと同じような体内動態を示すものと考えられるからです。
今後期待することはまず種間差の再現性を試験受託機関で得ることですね。


以上が8月の報告です。
詳しい資料は
食品安全委員会(第345回会合)議事次第からどうぞ。
資料1を参考にしました。議事録が読みたいです。



文字だらけになってしまいましたが少しは伝わったでしょうか。
全部読んでいただいた方には理解していただけたと思うのですが、この件については食品安全委員会から報告要請のあった3点の試験がようやく出揃い、議論はこれから行われるところなのです。
GELからグリシドールが生成されているので、ニュースに書いてあったことは間違いではありません。でも正しいわけでもありませんよね。実際にはもっと現実的な用量でも試験をしてます。
4600倍の試験では「GELの体内動態を調べる」こと。
低用量の試験では「実際の摂取量ではどうなるかを調べる」こと。
二つの試験には異なる意味があるのです。
4600倍の試験を行うことで初めて血漿中の濃度変化に関する知見が得られました。そのデータがあるからこそ低用量の試験ができました。

「4600倍なんて意味がない」という意見が多数見られましたが、私はそうは思いません。
こうして報告している以上の試験を行っているでしょうが、報告されている試験のデザインはこの分野に詳しくない私でも合理的であると感じます。その理由は上記で言いました。


最後に、繰り返しになりますが、グリシドール脂肪酸エステルからグリシドールが生成されるという事実は想定されたいたことです。新しい、驚くべき事実ではありません。
昨年の報道で「ワーストケースを考えると」と言われてたのを覚えているでしょうか。
考えていた最悪のケースが事実であった、とそれだけの話です。
そうしてもう一つ覚えているでしょうか。
花王は当初、生産を停止しましたが店頭の販売はそのままでした。そしてそれには厚生労働省からも食品安全委員会からも否がついていません。つまり、最悪のケースを想定しても販売を続けても良い程度の不純物量だったのです。ひとつ前のエントリでも書きましたが、不純物としてグリシドール脂肪酸エステルが含まれているドイツの粉ミルクは規制を受けていません。
それなので、個人的な感想を言わせてもらいますと「何を騒いでるの?」という感じなのです。しかし、これは花王のリスクコミュニケーション不足によって加速した部分も多いので一面では仕方ないかな、と思います。
企業と私たち消費者が向き合っていなければコミュニケーションを図ることはできません。
花王はようやく消費者に伝えるべきことを書いたようです。
私たちも正しい情報が欲しかったら企業の方を向いてコミュニケーションするべきなのかもしれません。



花王のHP食品安全委員会の資料は誰でも自由に閲覧できます。
みなさんも資料を眺めてみてください。
また、至らないところがたくさんあると思いますが間違いなどございましたらコメント等でご指摘ください。



※画像のサムネイルが小さくてご迷惑をおかけします。
なるべく早いうちにクリックしないでも見られるよう改善します。

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