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日常に潜む疑似科学的なことをメインに食指の動く方にのらりくらりと書いていく雑記です。
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前置きが随分と長くなったので分けました。
本エントリを読んでよく理解できなくなった場合は戻って読んでみてね。
エコナに含まれるグリシドール脂肪酸エステルのその後についてちょっと解説するよ(前置き編)
※食品安全委員会の資料を読んでいるだけなのでそこに書いていないことは私もわかりません。早く議事録が読みたいです。


読み進める前に、花王が出しているQ&Aを紹介しておきます。
今回の結果についても簡潔にまとまっていますのでどうぞ。こんなブログを(ry
エコナに関するQ&A(花王株式会社)


前置き編のおさらい。
花王はグリシドール脂肪酸エステル(GE)に関して食品安全委員会から、

1.グリシドール脂肪酸エステル及びグリシドールの毒性に関する情報収集
2.グリシドール脂肪酸エステルを経口摂取した場合の体内動態試験
3.グリシドール脂肪酸エステル及びグリシドールの遺伝毒性試験

について報告してね、と言われていたのでした。
1については報告済みで、2と3の試験の結果からGEからグリシドールできてるよ!ということがわかり、
メディアで取り上げられたのでしたね。

以上おさらい終わり。


それではまず、2010年6月の報告を見てみましょう。
ここでは2の方法の開発と3の試験結果が報告されています。

・食用油脂中のGE含量の測定
食用油脂中のGEの分析法を開発し、実際に測定した結果が報告されています。
DAGを主成分とする油(エコナ)以外のほとんどの食用油では定量下限限界以下しかGEを含有していません。一方、DAG油には他の食用油の約100~1000倍ほどのGEが含まれています。
DAGに含まれるGEは多い順に、グリシドールリノール酸エステル、グリシドールオレイン酸エステル、グリシドールパルミチン酸エステルとなっています。この中でグリシドールオレイン酸エステルに関してはIARCの発がん性リスク評価においてGroup3(ヒトに対する発がん性が分類できない)に分類されています。
以降の試験で用いられているGEはグリシドールリノール酸エステル(GEL)です。

・体内動態研究のための分析方法の開発
GEの体内動態試験のために、血漿中のGEおよびグリシドールの高感度分析法の開発を行っています。GEはLC/MS法により定量限界5 ppb=0.005 μg/mL、グリシドールはGC/MS法により定量限界0.2ppm=0.2 μg/mLで分析できます。グリシドールは揮発性が高く、低分子量であり不安定なことから高感度の分析方法の開発が難しいようです。
8月の報告ではこの分析法を用いた試験が行われています。

・GELおよびグリシドールの遺伝毒性試験
グリシドールは動物実験で発がん性が確認されている物質で、遺伝毒性があることが知られています(発がん性物質の中には遺伝毒性のないものもあります→参考)
遺伝毒性試験としてAmes試験、染色体異常試験、小核試験が行われています。
それぞれの試験の違いは
花王のサイトを見てください。
遺伝毒性のあるグリシドールではAmes試験、染色体異常試験で陽性でした。
GELではAmes試験で陽性、染色体異常試験で陰性でした。
小核試験においてはグリシドール、GELともに陰性でした。
ここまでが
GLP基準に適合した試験受託機関における遺伝毒性試験です。この試験については国立医薬品食品衛生研究所の研究者を中心とした専門家により信頼性および中立性が確保されていると報告されています。
次に、Ames試験では陽性が出ていましたのでGELからグリシドールが生成されている可能性が考えられました。そこでGELにリパーゼ阻害剤(リパーゼの作用によりGEがグリシドールとリノール酸に加水分解されます)を加えてみたところ、復帰変異個体の増加が抑えられたそうです。
ここまでが花王の自主研究です。

以上の試験結果から、GELのAmes試験での陽性結果は、GELからグリシドールが生成したことによるものである可能性が示唆された、と結論付けています。

以上が6月の報告です。
詳しい資料は
食品安全委員会(第334回会合)議事次第からどうぞ。
資料1および議事録を参考にしました。




次に、今回の報道のきっかけになった2010年8月の報告を見てみましょう。
ここでは主に「2.グリシドール脂肪酸エステルを経口摂取した場合の体内動態試験」に関する試験結果が報告されています。

・GEを経口摂取した場合の血中移行性試験
ニュースで報道された試験ですね。
エコナに不純物として含まれるGEの約4600倍(4571倍:体重50kgの人が1日に10gのエコナ油を使ったと仮定して算出)である75 mg/kgのグリシドールおよびそれと等モルの341 mg/kgのGELを経口投与しています。投与後5、15、30分および1、2、4,8、24時間後の血漿中のGELおよびグリシドール濃度を測定しました。
すべての時間において血漿中のGELの濃度は定量限界(0.005 μg/mL)以下でした。つまり、GELのままでは吸収されないか、されてもごく微量であるということが言えそうです。
次に血漿中のグリシドール濃度です。GELでは投与30分後に、グリシドールでは投与15分後の最大値になり、そののちは速やかに減少しているようすが表およびグラフから読み取れます。


GEL6-1table.jpgGEL6-2Figure.jpg





以上のことから、この試験において、経口投与されたGELはグリシドールに変換され、血漿中ではグリシドールとして存在することが明らかになった、と結論付けています。


さて、少し解説します。
この試験ではエコナに含まれる量の約4600倍のGELとグリシドールを投与しています。この量に根拠がないわけではないのですが、あまりにも多すぎて「花王やけになりすぎ」なんて声もちらほら聞こえてましたね(主に
はてなブックマークで)。
花王は約4600倍、つまり75 mg/kgのグリシドール投与に対して「NTP(National toxicology program:米国保健社会福祉省の国家毒性プログラム)によるラット発がん性試験の最高用量である」としています。
NTPではラットに2年間の発がん性試験を行っています(簡単に知りたい方は
こちら、その他の発がん性試験も含めた評価はこちら【PDF注意】)が、そのときのグリシドール投与量が37.5 mg/kgと75 mg/kgでした。その高い値の方、ということですね。
信頼性の高い結果がすでにあるのでそれに合わせた量を投与することで比較も可能ですね。
また、グリシドールの性質上の問題として高感度の分析ができません。
たとえば投与するGELおよびグリシドールの量をエコナ含有量の170倍程度(GEL:12.7 mg/kg、G:2.8mg/kg)にしたらどうなるでしょう?実は投与後の最大値のピークが定量できません。検出はできると思いますが、その場合、この試験の意味はあるでしょうか?
この試験で知りたいのは「GELを経口摂取した場合の体内動態」です。
もちろん最終的には花王はエコナの安全性を保証したいのです。ですが、もっと小さな用量で定量限界以下だから問題ない、なんて花王が言ったら逆にぶっ飛ばします。
この試験において「定量できない」「検出できない」ということは「GEの影響がわからない」と同義なのです。
それでは何の意味もありませんね。
この試験で確認したいのは「GEを経口摂取した場合の体内動態」であり、その方法として血漿中のGEおよびグリシドール濃度を測って一つの指標としているわけです。
この試験を行う前にAmes試験においてGELがグリシドールに変換されること、それはおそらくリパーゼの作用によるものであろう、ということがわかっていました。
ですので、今回の試験は「発がん物質に変わるかどうかを見るための試験」ではありません。
それはもうとっくに確認済みなのです。
【追記】少し大雑把に言いすぎました。「GELがグリシドールに変換されること」について、Ames試験はin vitroの試験、ラットへの経口投与試験はin vivoの試験でした。
in vitroin vivoで異なる結果が出ることは少なくありません。そういう意味で「GEを経口投与したら体内でグリシドールに変換した」という結果は意味のあるものです。
ただし、変換されることを確認するためには高用量での試験は不可欠でした。
【追記終わり】


さて、解説を含めて少し長くなりましたがここまでよろしいでしょうか。
次いきます。


・ラットとカニクイザルを用いた血中移行性および種間差の検討

上記の試験において、
「血漿中ではグリシドールとして存在する」
「投与後30分あるいは15分後に血中濃度がピークになる」
ことが確認されましたので、今度はもう少し低い用量で試験を行っています。
ラットではエコナの普通使用量(一日10g)である1倍量および5、25、125倍量のGELおよび等モルのグリシドールを投与し、カニクイザルでは100倍量および300倍量のGELおよび等モルのグリシドールを投与して、投与後15分および30分後の血漿中のグリシドール濃度を測定しています。
ラットにおいてはGEL投与群がやや低い値を示すものの、GELあるいはグリシドール投与において血漿中濃度に大きな差は見られません。ところが、カニクイザルでは300倍用量を投与した際にGELとグリシドール投与では大きな差が見られました。グリシドールを投与した場合は血漿中にグリシドールが15分後に0.14 μg/mL、30分後では0.16 μg/mLが検出されていますが、GELを投与した場合には血漿中のグリシドール濃度は定量下限(50 ng/mL)以下でした。


GEL8-3table-and-figure.jpg










以上の試験結果から、カニクイザルにおけるグリシドールの血中移行性は、ラットの血中移行性と異なる可能性が示唆された、と結論付けています。

花王は、ラットとカニクイザルの種間差に関して舌リパーゼの活性の違いが血漿中のグリシドール濃度に影響しているのではないか、としています。


ラット、マウス等のげっ歯類は舌漿液腺から口腔内に舌リパーゼを分泌することが知られています。ウサギ、ブタ、ヒヒ、ヒトなどの動物種ではその酵素活性はほとんど認められず、げっ歯類では高いことが報告されています。(略)ラットとカニクイザルを用いた血中移行性に関する試験において、GELを投与したラットに急速な血漿中グリシドール濃度の上昇が認められ、サルには認められなかったことについては。脂質消化に関与する舌リパーゼの寄与が影響した可能性があると推察しました。すなわち、ラットでは舌リパーゼが異で活性を持ち、そのため、GELは胃内への投与後速やかに脂肪酸が遊離してグリシドールに変換し、直ちに吸収されて、その結果、グリシドールを直接胃内に投与した場合と同じような投与初期の血漿中グリシドール濃度の急速な上昇が認められたものと考えられました。一方、サルにおいては、胃内での舌リパーゼの活性が低く、GELからグリシドールに変換されにくかった結果として、血漿中にグリシドールは認められなかったものと考察しました。

この試験はリパーゼ阻害剤を用いたAmes試験同様に花王の自主研究ですので、信頼性および中立性の確認を受けたものではありません。


さて、必要ないかもしれませんが少し解説します。
まず、定量下限が異なっていることに関して。種間差の試験では花王が開発検討していた高感度分析法の一つATD-GC-MS法が導入されていますので、最初の約4600倍投与した試験とグリシドールの定量下限よりも高感度の定量ができているそうです。
試験の結果を受けて食品安全委員会でどのような議論が行われたかはわかりません。
しかし、実際にラットとサルではGELから生成されたグリシドールの吸収量に種間差があるというのは大きなポイントだと思われます。ヒトではおそらくカニクイザルと同じような体内動態を示すものと考えられるからです。
今後期待することはまず種間差の再現性を試験受託機関で得ることですね。


以上が8月の報告です。
詳しい資料は
食品安全委員会(第345回会合)議事次第からどうぞ。
資料1を参考にしました。議事録が読みたいです。



文字だらけになってしまいましたが少しは伝わったでしょうか。
全部読んでいただいた方には理解していただけたと思うのですが、この件については食品安全委員会から報告要請のあった3点の試験がようやく出揃い、議論はこれから行われるところなのです。
GELからグリシドールが生成されているので、ニュースに書いてあったことは間違いではありません。でも正しいわけでもありませんよね。実際にはもっと現実的な用量でも試験をしてます。
4600倍の試験では「GELの体内動態を調べる」こと。
低用量の試験では「実際の摂取量ではどうなるかを調べる」こと。
二つの試験には異なる意味があるのです。
4600倍の試験を行うことで初めて血漿中の濃度変化に関する知見が得られました。そのデータがあるからこそ低用量の試験ができました。

「4600倍なんて意味がない」という意見が多数見られましたが、私はそうは思いません。
こうして報告している以上の試験を行っているでしょうが、報告されている試験のデザインはこの分野に詳しくない私でも合理的であると感じます。その理由は上記で言いました。


最後に、繰り返しになりますが、グリシドール脂肪酸エステルからグリシドールが生成されるという事実は想定されたいたことです。新しい、驚くべき事実ではありません。
昨年の報道で「ワーストケースを考えると」と言われてたのを覚えているでしょうか。
考えていた最悪のケースが事実であった、とそれだけの話です。
そうしてもう一つ覚えているでしょうか。
花王は当初、生産を停止しましたが店頭の販売はそのままでした。そしてそれには厚生労働省からも食品安全委員会からも否がついていません。つまり、最悪のケースを想定しても販売を続けても良い程度の不純物量だったのです。ひとつ前のエントリでも書きましたが、不純物としてグリシドール脂肪酸エステルが含まれているドイツの粉ミルクは規制を受けていません。
それなので、個人的な感想を言わせてもらいますと「何を騒いでるの?」という感じなのです。しかし、これは花王のリスクコミュニケーション不足によって加速した部分も多いので一面では仕方ないかな、と思います。
企業と私たち消費者が向き合っていなければコミュニケーションを図ることはできません。
花王はようやく消費者に伝えるべきことを書いたようです。
私たちも正しい情報が欲しかったら企業の方を向いてコミュニケーションするべきなのかもしれません。



花王のHP食品安全委員会の資料は誰でも自由に閲覧できます。
みなさんも資料を眺めてみてください。
また、至らないところがたくさんあると思いますが間違いなどございましたらコメント等でご指摘ください。



※画像のサムネイルが小さくてご迷惑をおかけします。
なるべく早いうちにクリックしないでも見られるよう改善します。

拍手[14回]

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朝日新聞共同通信のニュースをきっかけに、Twitterではエコナに関するつぶやきが多く見られました。かくいう私も結構呟きました。しかし、どうも関係者やエコナ報道を追ってる人たちと、ニュースを見た人たちの温度差が大きすぎて若干戸惑います。
グリシドール脂肪酸エステルに関してはようやく議論を開始するためのデータが出揃ったばかりで、まだスタート地点ですのであまり断定的なことは言えません。しかし、間違った認識が広まっていくと食品の安全性に関するリスクコミュニケーションに支障をきたすような気がしたので、6月の報告と8月の報告を合わせて簡単に解説しようと思います。


読み進める前に、花王が出しているQ&Aを紹介しておきます。
今回の結果についても簡潔にまとまっていますのでどうぞ。こんなブログを読むよりも時間の有効活用になりますよ!
エコナに関するQ&A(花王株式会社)


まず前提として、エコナクッキングオイル(以降エコナ)の安全性は確認されています。
少なくともすぐにどうにかしなければいけないほどのリスクはありません。
詳細については過去に言及済みなので改めては書きません。
ぐちゃぐちゃで恐縮ですが過去エントリをご覧ください。
【追記あり】6年前から指摘されているエコナの「危険性」って?(azure blue)
過去の安全性試験は「グリシドール脂肪酸エステル(以降GE)も不純物として含むDAG油」で行われています。現在はその中でも特にGEを取り上げてその体内動態に関する試験が行われています。
たとえば、コーヒーにはごくごく微量ながら発がん性物質が入っています(
約1000種類の化学物質のうちの19種類【PDF注意】)。しかし、コーヒーという飲み物で見てみると、いくつかのがんに対して抑制的に働くであろうことが示唆されていますし、コーヒーの飲み過ぎでがんになったという話は聞いたことがありません。
詳しくは
国立がん研究センターのHPで。
それと同じように、エコナには発がん性物質に変化する成分(GE)が入っていますが、食用油としての安全性は確認されています。
以上を前提に解説をしようと思います。


最初にグリシドール脂肪酸エステル(GE)について簡単におさらいしましょう。
2009年3月にドイツのリスク評価機関(BfR)により精製油脂およびその油脂から製造された乳児用粉ミルクにGEが含まれていることが公表されました。ドイツでは「製品中から減らすよう努力しなさい」と言われていますが、いまのところどの製品も販売中止や摂取制限などはされていないそうです。
食用油脂のGE(3-MCPD脂肪酸エステルの安全性議論からスタートしましたね)を調べたところ、エコナに含まれるGE量がその他の食用油脂に比べて10倍以上であったことが判明しました。
グリシドール脂肪酸エステルについて(花王株式会社)
不純物であるGEをDAG油とともに摂取し体内で分解された場合、ヒトに対しておそらく発がん性のあるグリシドール(IARCによる評価はGroup2A)になる可能性がありました。また、GEは最近になって食用油脂中に含まれることがわかったので、体内動態に関する知見がほとんどありませんでした。リスクのわからない不純物が他の食用油脂と比較して高濃度に含まれるのため、消費者の安心に配慮して販売を中止し、製品中のGE含有量を低減して再販売するとしています。
現在は改めてトクホの申請をするために安全性と有効性情報を積み重ねているところだそうです。


この間、消費者庁と消費者委員会の暴走がありましたがそれについては(過去に散々吐き出したので)もう触れないでおきましょう。
発足直後でいろいろ混乱があったのだと思います。
また、最近はとても良い仕事をしていると思うので頑張ってほしいですね。


さて、食品安全委員会は花王に対して以下について2009年11月末日までに報告するように要請しました。
(情報の伝達としては、花王←→厚生労働省(医薬食品局)←→内閣府(食品安全委員会))


1.グリシドール脂肪酸エステル及びグリシドールの毒性に関する情報収集
2.グリシドール脂肪酸エステルを経口摂取した場合の体内動態試験
3.グリシドール脂肪酸エステル及びグリシドールの遺伝毒性試験


「1.グリシドール脂肪酸エステル及びグリシドールの毒性に関する情報収集」に関しては2009年11月30日に報告されています。
2.3に関しては2010年の6月と8月に報告があります。

それについては次のエントリで簡単に解説します。
というわけで続きます。

続きました→エコナに含まれるグリシドール脂肪酸エステルのその後についてちょっと解説するよ(解説編)


関連エントリ:
【メモ】エコナの話(あくまで所感)【追記した】(azure blue)
Wikipediaのグリシドールの記述がおかしい(9/28現在)(azure blue)
厚労省は責任を負うべきか(azure blue)

拍手[3回]

NYのレストランで「塩使用禁止法案」が提出されたらしいよーって話を痛いニュースで見て、そんな馬鹿な・・・と思ってソースを辿って行ったんですが、訳が間違ってるわけじゃなさそうです。
ただ、その過程でとても面白いものを見つけたので紹介したいと思います。


NYで「レストランで塩使用禁止法案」提出…高血圧など生活習慣病の抑制に(痛いニュース(ノ∀`))

NYのレストランで「塩使用禁止法案」提出(サーチナ)

NYのレストランで「塩使用禁止法案」提出(ロケットニュース24)

NY restaurants face total salt ban if politician gets his way(Telegraph)


残念ながらTelegraph(イギリスのメディア)でソースが完全に途切れたので、記者の勘違い?と思ったのですが、Felix Ortiz議員のWikipedia(英語)を見たらすでにそのことが書いてあり、アメリカのニュースソースを見つけることができました。

関連ニュース
Brooklyn Dem Felix Ortiz wants to ban use of salt in New York restaurants(NYDailyNews)
Assemblyman seeking to ban all salt in restaurant cooking(TimesUnion)


これはアメリカでも相当話題になったようで、いくつかのメディアが取り上げています。
その反応の多くはねーよwww というものです。
痛いニュースでは「アメリカおかしいんじゃねーのw」という反応が多数を占めていましたが、おかしいのはOrtiz氏だけで、アメリカでもだいたい同じ反応のようです。


さて、Wikipediaを読んでいて不思議に思った点が一つあります。
Telegraphおよび日本の記事ではBloomberg市長も支持している、とありますが、Wikipediaの記事には

New York City mayor Michael Bloomberg, who called the bill "ridiculous"

つまり、

NY市のマイケル・ブルームバーグ市長はこの法案について「おかしい」と言っている

と書いてあります。
そのソースがこちらで、精訳していないですが簡単に要約してみると、

Ortiz氏の言うこと(塩分過剰摂取のリスク)はもっともだが度が過ぎている。そもそも、私たちはまさに減塩に取り組んでいるところだ

というのです。
良かった。市長がまともで良かった!

そうなのです。
NY市では現在、ファストフードを含めたレストラン、加工食品などの減塩政策に取り組んでいるのです。
2009年から始まっていて、アメリカのメディアで取り上げられたのが2010年1月ごろです。

関連ニュース
New city plan pushes for 25% reduction of salt in nearly all food products(NYDailyNews)
Next on New York's health agenda: curbing salt intake(TIME)

アメリカでの塩分摂取量の約75%が加工食品や調理済み食品に由来しているという報告があります(参考:
疫学批評
そうすると、家庭内でどんなに塩分摂取を控えたところでたかが知れていますよね。
そこでNY市では「個人で減塩に努めなさい」と言うのではなく、食品製造業者に食品中の塩分量を減らしなさいということにしました。


さて、実際の取り組みを見てみましょう。
NY市保健精神衛生局(DOHMH:Department of Health and Mental Hygiene)は
2014年までの5年間に加工食品の塩分量を20%削減する、という方針を打ち立てました。(ニュースでは25%とありますが、こちらのページでは20%となっています)
報告当時(2009年)の加工食品中のナトリウム量を調べ、そこから2012年に約10%減らし、2014年に約20%減らしたときの目標値がそれぞれ記されています。
Restaurant Food Targets (PDF)

目標値がちょっときついかな?とも思うのですが、このような積極的な取り組みをしているのはNYだけではありません。
イギリスでは国を挙げて減塩に取り組んでいました。その結果、4年かけて塩分摂取量を10%減らすことに成功しています。イギリスでも成功してるからうちでもできるはずだ、ということですね。


このような、製造業や外食産業を巻き込んだ大きくて重要な政策について市長が知らないとなると「ええ!?」って思いますよね。
ちなみに、Bloomberg氏の発言を見つけたのは最後だったので、それまでずーっと「ええ!?」って思ってました。


さて、NYでは製造業に圧力をかけても減塩を促進したいのですが、実はそんなアメリカ人よりも日本人の塩分摂取量は多いのです。
アメリカ人男性の一日の塩分摂取量が10g程度であるのに対して、日本人男性は12g前後摂取しています。
日本には漬物がありますし、味噌も醤油もいわば塩です(塩分濃度はそれぞれ10%、15%程度)。
そんな日本人は食塩を過剰摂取しやすく、また塩分の過剰摂取による疾病のリスクが他の国と比べて高いです。

たとえば胃がん、胃潰瘍、高血圧などの疾病の他に、
高血圧からくる心疾患、動脈硬化、脳卒中、腎臓疾患などのリスクも高くなります。


それでも、日本でもまったくなんの努力がされていないわけじゃありませんよ。
一日の塩分摂取量を10g未満(女性では8g未満)が望ましいとされていますが、ここ10年で1g、30年前と比較しても2g減らすことに成功しています(
参考1参考2:Garbagenewsより)
ただしWHOでは一日5g以下が望ましいとしています
なので、実はあと半分減らしたいわけですね。

日本では家庭内での塩分摂取量が25%ということはないでしょう。たぶんもっと大きな割合を占めていると思います。だから、右に倣えが必ずしも正しいとは言えません。
でも、もしかしたらこのような大胆な政策が参考になる地域があるかもしれません。たとえば東京とか。



Ortiz氏の提出した法案は極端でしたが、塩分の過剰摂取のリスクについてはまったく正しいことを言っています。そして、塩分過剰摂取のリスクを正しく理解したうえでNYは減塩政策を実行しています。
NY市のこの取り組みは、塩分摂取量の約75%が加工品や外食であるNYの特徴をよくとらえており、成功すれば効果が期待できそうです


悪いところは反面教師として受け取り、良いところは積極的に真似するのが賢い方法ですね。
アメリカm9(^Д^)プギャーしてる間に周りはどんどん先へ行ってしまいます。
NY市の取り組みから学ぶことは多いはず。私たちも減塩についてもうちょっと考えてみたいですね。



なんだか賢い日本人の方が随分と多いようだったので、ちょっとムキになって書いてみました。



ところで、日本での取り組みをほとんど知らないので補足してくれる方がいらっしゃるとありがたいです。



追記
日本にだってお馬鹿なことをつい口走っちゃうお馬鹿な議員さんは結構いますよね。
そんな感じ。
法律を守らない市長だったり、自由奔放な知事だったり、極端に思想の偏った議員だったり、自治体主催の食品添加物の講演会で安部司氏を呼んじゃったり。あるよねー。

あと、加工食品というのは自宅で食べるシリアルとか食パンとかマーガリンとか梅干しとかいろいろ含むのではないかと思います。あれ。そうすると日本でも結構加工食品が多いのかしら。
そのへんの調査がないか探してみると面白そうですね。調べてみようと思います。

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いまさらになってカテゴリ選択ができないことに気がついたので少しプラグインを変更しました。

・ブログ内検索ができるようにしました。
・カテゴリごとに記事を表示できるようにしました。
・リンクを増やしました。


ええ、無断リンクです(笑)
基本的には、

・自分のもう一つのブログ→むいみ な 日記
→本当に日記なので主に音楽の話と日常の話です。
たまにニュースや科学的な話などを取り上げますが、基本的にはネタ+注意喚起。
・プロとアマの研究家について→「研究ごっこ」Q&A
・懐疑論に関して→懐疑論者の祈り
・議論について詳細に書かれていてさらに勉強できる→中学生からの論理的な議論の仕方
・査読付き論文の書き方→これから論文を書く若者のために
→これは拙ブログの記事「論文と科学的証明に関する考察」でもさらりと触れています。
雑誌の性質までは考えたことがなかったなぁというのが率直な感想です。
私の研究室だと基本的には2~3誌から選んでるみたいなので。


その他、リンクしたいブログがたくさんあるのですが、精神的にあまりゆとりがないのでとりあえず保留。
同じ理由でトラックバックも送ってません。というか、トラックバックは送り方がよくわかってないのでまだ2回しかやったことがないです。
でもって最近はようやくはてなブックマークの仕組みを知りました。昔、はてブからのアクセスがたくさんあってびっくりしたのだけどよくわからなかったから放置してたのでした(^^;
でも基本的にはアクセス解析の「検索ワード」にひっかかってこないものは「あ、みんな興味ないんだ」と思って続きを書かないことが多いです。というわけで何かを期待される場合はコメントいただけるとありがたいです。

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