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日常に潜む疑似科学的なことをメインに食指の動く方にのらりくらりと書いていく雑記です。
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アクリフーズの事件で、消費者は怒るべきだという記事があったので思うところを書いてみます。


第一報が入ったあたりの私の反応はTogetterに一部まとめられてるのでどうぞ。
Twilogの12月29日~31日にもそれ関連の呟きは多いので暇ならどうぞ。


さて、「子供(体重20キロ)が1度に60個のコロッケを食べないと毒性が発症しないレベル」という説明したアクリフーズにこの説明を行ったことに関しては一切弁解の余地はないですが、厚労省が素早く訂正を促し、深夜1時半に会見を開いて謝罪して訂正を行ったことで「この件はもういいかな」と思っちゃったんですよね個人的には。「済」の箱にしまわれたというか。
ただそれは私の感覚なので他人もこう思わなければおかしいというつもりは毛頭ありません。

しかしLD50(半数致死量)を提示されたのになんでわりと落ち着いていたんだろうなと思ったのですが、まあ普通に考えて、

一度にコロッケを60個食べる子供(体重20kg)はまずいない

と思ったからだろうなと。
マラチオンのARfD(急性参照用量)は2mg/kg 体重で、NOAEL(無毒性量)は15mg/kg 体重(ヒトでの値)。
15000ppm(≒15000mg/kg)のコロッケを一個(22g)食べたときのマラチオンの摂取量が330mg。
体重20kgの子供のNOAELが300mg。
誤って一個食べたとしてもNOAELを少し越す程度なので嘔吐や下痢なんかよりもやはり臭いによる気持ち悪さの方が先に立つんじゃないかなと思いました。
半数致死量を食べるためには該当商品を7袋半食べる必要があります。まずこんなに買いません。
成人の場合は体重60kgで換算するのでこの3倍量ですよね。180個。まあ普通はいっぺんに食えません。一袋(8個)をいっぺんに食べて嘔吐した事例がありましたが、最大でその程度だろうと。
子供が8個ぐらい食べたら中毒症状が出ると思いましたが「半分殺す気か」とは思いませんでした。

ARfDで判断すべき事例をなぜNOAELで評価してるのかについては、ARfDは商品回収の目安で、NOAELは実際に口にしてしまったときの危険性の目安で、私の中では双方別々の評価基準なのです。
もちろん、安全性を考慮して一般的にはARfDで評価するのが正しいです。
ただ、私のリスク感覚はそういうものだったので、、

説明の誤り、など生ぬるい表現だ。半数致死量を基に説明したのだから、「日本人の半数を殺す気か」くらいの勢いで怒っていいくらいのミス。

とは思わないんですよね。
というか「日本人の半数を殺す気か」という表現は実際のリスクの大きさから考えるとオーバーな気がします。
私は該当食品を食べたことがないし、180個も食べる気はありません。
「コロッケを60個食べた子供(20kg)や180個食べた大人(60kg)の半数を殺す気か」という表現はできるかなと思いますが。



それよりも私はむしろマスメディアに怒ってました。
アクリフーズの説明は本当にあってはいけないし、LD50で計算してしまうとはお粗末すぎます。ARfDは日本ではあまり馴染みのない基準値なので知らなかったとしても「ありえないでしょ」とは言えないなあと思っているのですが、そうであってもNOAELやADIで計算すべきでした。そうすればとんでもない量が混入されていたと正しく認識できたでしょうし、「60個食べないと~」という表現は出てこなかったでしょう。
ただ、会見の場に居合わせた記者は誰一人としてこの計算をおかしいと思わなかったのでしょうか。
記事にして公開する前に編集部の誰もおかしいと思わなかったのでしょうか。
毒性評価が正しく行われているかを確認するというのは、初歩的な事実確認の範疇だと思うのです。
報道では会見内容を忠実に伝えることも大事だと思うのですが、会見内容が事実であるか確認する責任も報道にはあるのではないかと思うのです。
もちろん、その場で「この計算はLD50を基に行われている…!」と気付けと言ってるわけじゃないですよ。私だってマラチオンのLD50はおろかADIもARfDも知りませんでした。
しかし、2200ppmとか15000ppmという数値を見て「そんなに余裕があるだろうか?」と思わなかったんだろうか、と疑問に思うのです。
もしかして、会見の場では記者は質問をできなかったのでしょうか。


アクリフーズに対して「日本人の半数を殺す気か」くらいの勢いで怒っていいのならば、マスメディアに対しては「日本人の半数を殺す片棒を担いだ共犯者」と怒っていいと思うのですよ。
だって無批判に右から左に流してただけですからね。報道ってそういうものなんですね。
その後もさらりと訂正会見があったことを報道してますけど、そもそもマスメディアがアクリフーズの説明を批判的に検証していればこんな恐ろしい情報が流れずに済んだと思いませんか。
この計算をやっちゃったアクリフーズの人が会見前に厚労省やマルハニチロに相談しなかったのは馬鹿だなあと思いますし、マニュアル外のことが起こったら素直に外に助けを求めなさいよと思いますけど、一番信用できないのはマスメディアだなあと思っちゃいましたよ。
これ、担当した人は食品報道したことがない人なんでしょうか。各社それぞれ。
農薬の基準値超過の場合、とりあえず計算してみようってならないんでしょうか。不思議。そういう習慣付けさせた方がいいですよ。そうしたら読者にどんな情報が必要かわかるでしょうから。


以上、私の怒りポイントでした。
長いことお疲れ様でした。

以下に「こうすればよかったんじゃないだろうか」ということを箇条書きにしていきます。

■アクリフーズやマルハニチロ、企業側に対して
・第一報の時点で警察に相談したいたことから、混入の可能性も視野に入れていたことがわかる。ならば「一度に○○個食べない限り」という表現は使ってはいけない。
・ARfDは日本では一般的な概念じゃないので知らないのは仕方ない。けれどLD50はない。ありえない。「一度に○○個~」という表現を使いたければADIで計算しよう。

■マスメディアに対して
・150万倍とか農薬の残留基準とか実際の数値がわからないような報道はやめて。
・15000ppm、残留基準値(0.01ppm)など書いてくれれば読者も理解できる。
・というか、事実確認する気がないのなら読者が事実確認できるように数値を載せて下さいマジで。
・食品関連の報道する記者の方は、こういう報道を見たら計算するクセをつけた方がいいんじゃないだろうか。自分の担当でなくても。
・こういうのは慣れなので。

■厚労省に対して
・GJでした。
・いつもADIで規制するのにARfDが出てくると思ってなくてすごくびっくりしてドキドキした。
・なんだか私の知ってる厚労省と違う。
・ポジティブリスト制度の一律基準値違反についてはARfDで評価しましょうよそうしましょう。



最後に。
今回の事件は、最初にまず「混入か」と思って「あ、まだ残留農薬の可能性があるのか」と思った後に実際の数値を見て「混入ですね」と思いました。現時点(1月21日)では残留農薬の可能性はほぼゼロと考えていいでしょう。
その理由は主に二つ。
原材料が汚染されていたのならば同一ラインが汚染されていたということなので、
 ・マラチオンが検出された製品がもっと見つかっていい
 ・検出された製品間での数値の差が100倍以上開くことは考えにくい
ということ。



すごく久しぶりにブログというものを書いたのでなんかまとまらない記事になっちゃいましたね。
めんどくさいなーと思ったのでまたブログから遠ざかりそうとかなんとか。



■以下、本文になくてもいいけど知ってると得する?予備知識

「残留農薬の基準の○○倍」という表現がなぜ役に立たないかというと、実は農薬の残留基準値は作物によってバラバラなのです。
たとえばマラチオンだとこんな感じ→マラチオンの基準値
作物によっては最大で8ppmまで残留しても違反ではないんですね。
報道で用いられる「残留農薬の基準値」という表現の9割(体感)がポジティブリスト制度による一律基準値のことを指しています。つまり0.01ppmです。(検出限界の関係でそれより大きいものもあります)
マラチオンの場合、同じ「残留農薬の基準値」でも最大値と最小値で800倍の差があります。
・0.01ppmの150万倍なら15000ppm
・8ppmの150万倍なら12000000ppm
その間に基準値はいくつもあります。
これでは値が一つに決まりませんね。
だからこういう表現の仕方はよくありません。インパクト重視なだけで情報すっかすか。
ではこうしたらどうでしょうか。
「残留農薬の基準値(0.01ppm)の150万倍が検出された」
冷凍食品には残留農薬の基準値なんてないのでもっとストレートに
「最大で15000ppmのマラチオンが検出された」

これならわかるよね?

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