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日常に潜む疑似科学的なことをメインに食指の動く方にのらりくらりと書いていく雑記です。
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この記事は「喫煙と肺がんの因果関係を調べるのに疫学以外に何を用いろと??(azure blue)」から続いています。


探しましたよー。
失礼ながら私は竹本氏を存じ上げなかったのですごく調べました。

というかあまりにも情報が少なくてクラクラしました。
「埼玉医大 喫煙 肺」の検索結果→
Yahoo! Google
特に日本パイプクラブ連盟の記事なんかはちゃんとソースつけとけ!と言いたくなります。

「黒い肺」はかなり衝撃的なので、確かに肺ガンになりそうだとか、たばこは体に悪いと思わせるアピールには効果的である。

 

ところが、この写真は極めて怪しい。

 

埼玉医大の研究によれば、人間の体内の細胞は新陳代謝によって日々更新されるから、肺も同じで、タール分が蓄積していって肺が真っ黒になるなんてことは有りえない。肺が黒くなるのには別の要因があって、喫煙が原因ではなく、大気汚染・職業暴露・加齢が主たる原因らしい。

禁煙ファシズムにもの申す


このページに書いてあることはおかしいことだらけで、禁煙ファシズムを糾弾する前に(能動)喫煙と疾病の関連性についてもっとよく考えた方がいいと思います。まあ、今回は「肺が黒くなる」話とそれに関連する話だけを取り上げるのでその他は無視します。

タールの蓄積量が細胞の新陳代謝の速度を上回れば肺だって黒くなるでしょうに。
『喫煙と肺がん』『喫煙と肺の汚染』『肺の汚染と肺がん』のそれぞれの因果関係を一緒くたに語るべきではないというのは前回に話したので省略します。

っていうか、コピペするのは良いですけどリンク元をちゃんと提示するかソースを貼っておきましょうよー。
まったくルーズなんですから―。


さて「竹本さん」という下りが初めて出るのは
たばこ事業等審議会懇談会(第6回)議 事 録の記事です。詳しくは前回の記事をご覧ください。


この間に、まあなんやかんやあってご本人が書かれたページ
喫煙と肺がんおよびその他のがんにたどり着くわけです。

そこの記述に

町並らは、東京大学の連続剖検例を用い、男性37例および女性24例を対象として、非喫煙群(喫煙指数:1日喫煙本数×喫煙年数=0)、軽喫煙群(喫煙指数=1~400)、中喫煙群(喫煙指数=401~1,000)、重喫煙群(喫煙指数=1,001~)の気管支・肺を形態学的、組織学的に比較した。胸膜面の炭粉沈着と喫煙との関係は軽度であるが、気腫性変化は喫煙により頻度が増し、その程度も強くなった。左右主気管支粘膜病変は、男性に多く、喫煙群にやや多い傾向を示した。

強調は引用者による

とあります。
この記述が元になっているんじゃないかと思うのですが、他にソースをご存じの方がいらっしゃいましたら教えてください。お願いします。

つまり61名の男女の肺の汚染度を比較してみたところ、喫煙と肺の汚染度に強い相関関係は見られなかった、ということですね。


次に肺が黒くなることに関する喫煙以外の要因についてです。

肺が黒くなるのには別の要因があって、喫煙が原因ではなく、大気汚染・職業暴露・加齢が主たる原因らしい。

禁煙ファシズムにもの申す

の根拠となる人での研究は見当たらなかったんですが、犬での研究ならされています。
もちろん疫学調査ですけど。
引用がちょっと長くなります。

竹本ら12)および片山ら13)は肺癌の発生に及ぼす大気汚染物質の影響を明らかにするため、喫煙お よび職業の影響を無視できる犬肺を対象とした研究を行っている。この研究では、1991年に川崎市で廃犬として処置された、年齢、飼育地区の明確な犬肺について、幼犬(0~2歳)、成犬(3~5歳)、老犬(6歳以上)に分け、飼育地区を住宅地区、商業地区、工業地区に区分し、肺の一定部位と病変が疑われる 部位の病理組織標本を調査した。肺の汚染度、肺の腫瘍性病変および肺の病変のない部位の金属 (Fe,Cu,Ca,Mg,Zn,Cd,Ni,Co,Cr,Pb)の分析を行い、1975~1980年に川崎市の廃犬1,000余匹について行った調査の 成績と比較している。1991・1992年の調査で検討された対象犬数は224匹であった。

1975~1980年の調査では、各地区とも年齢を経るにしたがい肺の汚染度が増加し、成老犬では住宅地区と工業地区とで肺の汚染度に差がみられた。 1991・1992年の調査では、年齢が経るにしたがい肺の汚染度は進行しているものの、前回の調査に比べその程度は軽減していた。

すなわち、幼犬では3地区とも無汚染肺が増加、成犬では住宅・商業地区で汚染度の軽いものが増加、老犬でも同様に汚染度の軽減がみられた。工業地区で汚染 度の強いものがみられたが、概して地区間の差は少なくなり、また、住宅地区についてはとくに地域間の差が大きく、商業地区に比較して高度汚染肺が多い傾向 さえみられている。

各種疾病に関する疫学研究


続けて大気汚染と肺の腫瘍に関する報告

肺の腫瘍については、1975~1980年の調査では 1,000 匹中良性腫瘍7例、悪性腫瘍7例(計 14 例)がみられ、悪性腫瘍はいずれも高度汚染肺にみられている。1991・1992年の調査では、224 匹中良性腫瘍1例、悪性腫瘍1例で、いずれも工業地区の老犬にみられている。これらの結果について竹本らは、固定発生源による大気汚染の低減化、各地区の大気汚染の差の縮小を反映したものとしている。

同上


注意点および疑問点
1.犬と人では口の位置が違うため地面からの位置が違う
2.大気汚染の度合を厳密に測定してない(あるいは示していない)
まあ、1975~1980年は改善されつつあったと言っても今より大気汚染の影響は大きかったでしょうね。

大気汚染による腫瘍形成率は1.4%か。
喫煙の肺がんへの寄与率をあまり知らないもので、これって多いのか少ないのかわからないなぁ。
そもそも1991・1992年の報告では老犬で見られているわけだけど、老化の影響は考慮しなくていいのでしょうか。
この報告で老犬と言っているのは、老犬の方が長い期間大気汚染に曝されてきた、と言いたいのでしょうけど、ファクターが2つになっているような気がします。
私自身はがんの原因として老化をもっとも普遍的な(環境要因に左右されないという意味での)ファクターとしてとらえていますので、このへんは厳密にしてほしいなぁと感じています。

んー。
ここまで言っておいてなんですが、大気汚染と肺の汚染の因果関係は明らかだと思います。
1963年(高度経済成長期の終わりごろ)に九州大の人が学会で報告してますし。→
大気汚染と野犬肺の汚染度について

また、竹本氏は人に対しても昭和61年~平成4年(1986~1992年)に「居住地および職業と肺がんの関連性」」に関して疫学調査を行っているんですよね。

竹本ら7)-12)および片山ら13)は、1986年から1990年にかけ、埼玉県西部地区(川越、所沢、 飯能市など8市、6町、1村、総人口約 127 万人)の1985・1986年度の肺癌死亡者 350 名、および一部地区の1987・1988年度の死亡者 215 名とその対照者(地区、年齢をマッチされた肺癌以外の死亡者)の家族(主として配偶者)に面接し、死亡者の居住歴、居住地の環境、喫煙歴、既往歴、食習慣 等の調査を行った。またこの調査では、剖検、手術例については組織型を調査し、さらに肺組織が得られたものについては、病変のない部位の重金属 (Fe,Cu,Ca,Mg,Zn, Ni,Co,Pb,Cr)の測定を原子吸光法により行っている。この結果、この地区の肺癌死亡者のうち男子では 60.3 %、女子では 62.8 %が移住者であり、定住者よりも移住者のほうが肺癌発生率が高いと予想されること、また移住者の前住地は男子では 72.6 %、女子では 63.0 %が東京都内、川崎市であること、死亡年齢は移住者のほうが若年にずれる(男子:1.8 歳、女子:5歳)ことが明らかにされた。喫煙については、喫煙率、喫煙指数とも肺癌群のほうが対照群より有意に高いが、定住者群と移住者群とのあいだには差がみられなかったことなどから、前住地の要因暴露(大気汚染、職業)が影響を与えている可能性が高いことが指摘されている。

同上

簡単に要約すると、ある地域で肺がん発生率を比較したところ

・喫煙者の肺がん発症率は非喫煙者より有意に高い
・肺がんでの死亡者の割合は移住者の方がやや高かった(男:60.3%、女:62.8%)
・移住者の約7割は東京都内(広っ!)や川崎市から
・移住者の方が肺がんでの死亡年齢が2-5歳低い
・喫煙率に定住者群と移住者群で差が見られなかった
・つまり喫煙以外にも肺がんの(リスクを上昇させる)ファクターがある
・居住地での環境要因の差が原因だと思われる
・それはおそらく大気汚染である

ってことかな。
原著にあたれないのでこの説明から読み解くしかないんですけどそんなに間違った要約はしてないと思います。
たださ、喫煙科学研究財団の人たちがもともと受動喫煙やETS(環境タバコ煙)を軽視してるからそれを考慮していないのかもしれないけど、都市部は人口密度が高いのでETSに曝される可能性が高くなり受動喫煙の度合いも高い可能性があるよね。そういう調査が行われてないか今度調べてみよう。

この結果から大気汚染が肺がんのファクターであると言っちゃっていいのかな。
まあ推測できない結果ではないとは思うんですけど。


で、大気汚染もがんの要因として考慮されていないわけじゃないですよね。
リンク先13枚目のスライドをご覧ください(pdfです)
当然、大気汚染や職業なんかもリスクとして考えられているわけです。
ただ、識者の間では大気汚染や職業よりもタバコによるリスクが最も高いと考えられており、それを支える根拠として疫学的な因果関係が証明されているわけですよね(ただ、私は詳しくないので今後調べる予定ではいます)。
個人的には喫煙と肺がんの因果関係はこの調査よりもずっとクリアに示されていると思うんだけどなぁ。

続く

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相関でしょ
「喫煙と肺がんの因果関係」とおっしゃいますが、物理学や数学じゃあるまいし、疫学で相関は示せても、因果関係を語るのは無理。せいぜい妥当性を検討できる程度でしょう。「相関関係は因果関係を含意しない (Correlation does not imply causation)」
こんな事だから禁煙ファシズムなどと積極的喫煙派から言われるのです。
嫌煙的喫煙者 2010/12/09(Thu)11:06:23 編集
嫌煙的喫煙者さんへ
嫌煙的喫煙者さん、こんにちは。

嫌煙的喫煙者さんは、
HIVとAIDSの関係は因果関係ではないと考えますか?
HPVと子宮頸がんの関係は因果関係ではないと考えますか?
塩分の過剰摂取と高血圧の関係には因果関係はないと考えますか?
脂質異常症と動脈硬化の関係はどうですか? 

これらはすべて疫学的にわかっていることですよ。
疫学は因果関係を示せないとおっしゃるのならば、生活習慣病と呼ばれる疾患のほとんどは因果関係が確立していないものばかりになります。

嫌煙的喫煙者さんには残念なことですが、複数の疫学調査の結果が「喫煙と肺がんの因果関係」を肯定しています。
「喫煙による肺がんのなりやすさ」は国や生活習慣によって異なりますが、おおむね「因果関係がある」との結論ですよ。嫌煙的喫煙者さんはご存じないかもしれませんが。

また、能動喫煙の害は何も肺がんだけではありません。
動脈硬化などの血管系疾患、心筋梗塞などの心疾患、COPDなどの呼吸器疾患などとの因果関係が報告されています。
特にCOPDは患者の90%以上が喫煙者(元喫煙者の方も含む)です。

これらの因果関係を支持する報告はたくさんあります。
因果関係が成り立っていないとおっしゃるのでしたら、コメント欄を提供いたしますので、ぜひその論拠をお示しください。
嫌煙的喫煙者さんは証拠も示さずになんでもかんでも「禁煙ファシズムだ」と叫ぶ積極的喫煙派の方とは違うのでしょうから存分に論拠をお示しいただけると信じております。
むいみ 2010/12/09(Thu)18:17:06 編集
無題
本エントリの冒頭にもリンクがありますが、嫌煙的喫煙者さんは
「喫煙と肺がんの因果関係を調べるのに疫学以外に何を用いろと??」http://kuroha.blog.shinobi.jp/Entry/153/
のエントリをお読みになったうえで、喫煙と肺がんの間に因果関係があるかどうかを調べるための実験デザインはどのようなものが妥当であるかを教えてください。

因果関係があるかどうかは調べてみなくてはわかりません。なので「調べなくてもよい」は答えにならないのでそのような返答はなさらないようにお願いいたします。

以上、よろしくお願いします。
むいみ 2010/12/09(Thu)18:38:59 編集
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